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隆二が厨房へ戻ると、シアンとヒロが鍋をカウンターまで運び終わっていた。
開店準備は整っていた。
「シアンさん、今日は粥を盛る係をしてくれ。俺は金を受け取る。ヒロさんは客を並べてくれるか?」
「はい」
「うん、わかった。」
「はい」
いつもと少し違う配置につくと、客たちが今か今かと待ち構えている。客たちも馴れたものできちんと1列になって待っていた。
隆二が金を受け取り、シアンが粥を注ぐ。ヒロが、列の管理をしてその日の仕事はあっという間に終わった。
粥売りを終えると、後ろで見ていた3人を集めた。
「こんな感じです。お金は、最後にギルドの人と確認をしてギルドへ預けてもらいます。その間に、もう1人はカウンターの掃除をする。別の1人は鍋やお玉を洗い、ここに逆さまにする。そこまでが仕事ですができますか?」
「うん、これならできるよ。」
「役目は、固定ではなく毎回交代してもらいます。」
「うん」
「それから、お腹の調子が悪い人は列を並ばせる係をしてもらいます。嘘を言わずに言えますか?」
「うん?腹が痛い時には言えばいいんだね?わかったよ。」
「恥ずかしいから黙っているなんてことのないようにしてくださいね。」
「うん、わかった。」
「では、明後日からお願いします。明後日は、俺たち3人が付いて教えるので、お互いの仕事をチラ見しながら覚えてください。」
「ありがとう!頑張るよ」
「それと、今日は仕事を見てもらいましたので、これを持ち帰ってください。」
隆二は、粥を1カップずつ渡した。粥と言っても、鍋に少し残したものを湯で伸ばしたので薄い。
3人の女性たちは目を見開いていた。
「いいのかい!?」
「時間をもらいましたからね。これは薄い粥ですが、働いた時は商品と同じものを用意しますから安心してください。」
3人は口々に礼を言って帰っていった。
それを見てヒイロは苦笑いを浮かべた。
翌々日、約束通り水浴びをしてきた女性たちにTシャツを渡した。
「これが制服です。仕事が終わったら洗濯して、仕事の時だけ着るようにしてください。仕事以外で来ていて襲われては大変ですからね。」
女性たちは、その意味が分かったのか笑みを消して頷いた。
「あの…旦那様…」
「俺のこと?リュウジでいいよ。」
「では、リュウジさん着替えさせてもらいます。」
その日は、鍋をカウンターに運ぶところからやってもらう。
ギルド用の粥と報酬用の粥は先に取り分け、ヒイロへ預けた。
隆二達は女性一人ずつについて、口出しをしながら仕事をしてもらう。特にお金を受け取る女性用に木箱を用意し、受け取ったら斜めになった口に落とすようにした。
ギルドが鍵を持っているので管理は任せる。
その日一日鍋を洗うまでしてもらい、ギルド職員との金額確認まで見届けた。
これなら大丈夫だろう。あとは任せられると思った。
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