表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/180

11 森の泉①

 隆二は、のどが渇いたので水筒の水を飲む。飲み干してしまったので、『インベントリ』の『水』フォルダを開いた。

 

 『神泉の神水⑥』『妖精の祝水⑧』

 

 「へ?」


 思わず変な声が出た。

 恐る恐るタップして説明を開いた。

 

 『神泉の神水⑥:神域の清浄なる水。』

 『妖精の祝水⑧:聖なる妖精が祝福した泉の水。転移者が飲むと、理想的なバランスでピリカの常在菌を得る。それによる病的症状は発生しない。アオマッペが飲むとほどほどに清められ、常在菌は理想的なバランスになる。双方とも運が良くなる。』


 「ん…」

 

 あの泉は、そんな大層な泉だったのか。

 確かに最初の泉は神聖な感じがしていたし、動物や虫の声すらしていなかった。

 なんとなく怖くて、汚さないように入らないようにした。あの時の俺グッジョブ。洗濯もしてしまったが…少し離れたところにしてよかった。

 前の泉も、それなりに広かった。泉はなんとなく汚してはいけないと思ったけど…。

 ピリカとアオマッペが分からないが、文脈からはこの世界のことかこの世界の人のことだろう。もしくは人ではなく何か別の生き物という可能性もあるか…。



 

 この水が沢山あれば薬のように使えそうだ。少なくても腹痛などには有効らしい。

 価値があるなら戻って沢山汲んでこよう。もっと早く気が付けられればよかった。いや、今ならまだ戻れるはずだ。隆二は、服を着て車へ乗り込むと来た道を戻った。

 同じ道を…1本道のはずなのに、明らかに鬱蒼とした森が続いているだけで、あの野原も何もなかったのだ。結局戻ることは出来なかった。

 マップや他のことも考えると、本当に神域か何かだったのかもしれない。最初使えなかったマップが、徐々に使えるようになったのだ。そういう事だと思うしかなく、欲張ってこれ以上欲しがるのもよくないだろう。

 考えるまでもなく、道は凸凹していて運転している間は歯を食いしばっていた。顎もつかれそうだし、尻もいたい。ハンドルを握っている手も汗で滑るのは相変わらずだった。


 

 隆二は、3番目の泉を目指して折り返したものの、泉へ続く脇道を見つけたのは夜遅くだった。今から森に入り泉まで向かうのは危険だろう。仕方なく林と脇道の間に車を泊めた。神域ではないのなら、昨日よりも危険なのかもしれない。念のためにできることはした方がいい。ここであれば、背丈のある草も茂っているので目隠しにはなるだろう。隆二は荷台へ移動すると、疲れもありすぐに眠りについた。



 音に気が付いて、隆二は眠りから覚めた。

 道を見ると、馬車と荷馬車が数台連なって走っていた。目を凝らしてみていると、映画で見るような馬車と幌のついた荷馬車だ。彼らが通り過ぎて、静かになったと思ったがうつらうつらし始めた頃には今度は馬が集団で駆けて行った。

 

 馬車に馬に甲冑か…中世くらいの世界だろうか?ある程度産業が盛んだといいけど…。甲冑を着ていたので、殺し合いが常の世界かもしれないと思うと不安になってきてしまう。



 翌朝、泉に向かうとバナの葉と枝を沢山集めた。

 バナの葉は大きいので、折って両サイドを枝に巻き付け、蔦で葉っぱを固定した。これで四角い容器ができる。

 『インベントリ』へ入れて説明を開いた。


 『バナの葉の器:バナの葉で作られている。』


 そのままだな…まあ器と判断されるなら、水を入れても収納できるだろう。

 隆二は池の水を汲み『インベントリ』へ入れた。

 

 『バナの葉の器(水):バナの葉の器に水が入っている。水質は中、微細な虫、細菌等を含む。器のまま保管の場合、2日で飲料可となる。』


 見えないけど虫いるのか…微妙な水質らしい。火を熾して沸かして飲むべきなのだろう。葉の容器であろうとも、溶けるような素材ではないので水が入っている限りは燃えることはない。

 でも…ライターもマッチもないので火をつけられない。枝で火熾しする根性はない。

 それに…フィルターが欲しい。

 いや、湧き出し口から採取できるのを忘れていた。汲んだばかりの水を捨てて、改めて泉に手を付けた。


 「リリー、バナの葉の器にこの泉の湧き出し口の水を入れて。」

 『かしこまりにゃん♪』

 『バナの葉の器(水):バナの葉の器に水が入っている。水質は上、わずかに細菌を含むがそのまま飲用可。器のまま保管の場合、2日間保管可能。』

 

 おぉ!

 湧き出し口の水はよさそうだ。

 わずかに含む細菌は、先ほど汲んだ水の影響なのか水にそもそも含まれるのかがわからないな。でも大丈夫そうだ。

そういえばと、隆二は自分のスキルを思い出し、電子レンジで温めた。ゴポっと沸き上がるまで加熱し、そのまま置いておく。



 隆二は周辺のバナの葉を集めるとその半数で器を作った。

 置いておいた湯が触れる程度に冷めたので、一口飲んでみる。普通の軟水のようだ。サラリと喉を通っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ