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倉庫2軒の手入れを終わらせ、燻して虫よけカビよけをする作業は終わった。
隆二たちは、ロロナに留守番をさせていつも通り朝からギルドへと向かった。
「リュウジさんおはよう。」
「ギルマス、おはようございます。」
ギルドでは、役職で呼ぶのが当然だと思いヒイロとは呼ばない。
「売り子候補を連れてきたから、少しいいだろうか?」
「はい、ありがとうございます。少しお待ちください。」
隆二は、出来上がった粥を20Lの鍋と小鍋に移してから、シアンに薬缶を沸かしておくように指示をして離れた。
ヒイロについていくと、20歳前後の女性が3人いた。
3人ともとてもガリガリに痩せているのは、この町では普通だったが隆二は悲しくなってしまう。
「初めまして、隆二です。」
「あのっ…粥を配る仕事を短時間するだけで粥をいただけると聞きましたが本当ですか?」
3人の女性の問いかけの圧に隆二は圧倒される。
「えっと、少し違います。粥を売ってもらいます。粥をお玉1杯ずつ売り、代金を受け取り、全てを売ったら、鍋を洗って片づける。使ったカウンターも掃除してきれいにするまでが仕事です。できますか?」
「やらせてください!」
「お給金は、お粥をお玉1杯ずつです。その分は、自分たちで盛らずにギルドから受け取ってもらうことになります。できますか?」
「大丈夫です。やらせてください!」
3人とも必死すぎて選べない。
「お前たち、落ち着きなさい。3人もいらない。どんなに困っていようと雇い主には関係のないことだ。わかっているな?」
「はい…すいません。」
「えっと、まずはお名前を聞いてもいいですか?」
「コエです。娘が1人いて、夫は亡くなりした。私一人で育てています。」
「ホリイです。私には息子と娘がいて、夫は出稼ぎから帰ってきません。」
「フーリイです。子供も夫も亡くなってしまい。一人です。」
いくつかの問いかけに答えてくれるが、3人とも切羽詰まっていて、同情を誘うような経歴付きだ。会話レベルは同じくらいで選べない…。
隆二は深呼吸をした。
「わかりました。それでは、3人にお願いします。」
「え!?いいのかい?」
「3人にお願いします。ただし、同じ仕事に3人も必要ありません。人を並ばせる仕事も追加しますがいいですか?」
「もちろん、やります!」
「条件があります。それを聞いて考えてください。」
「うん」
「仕事の前日の午後以降か当日の朝に水浴びをすること。どうしてもできない時には、体を拭いてくること。ここに来たら、口を漱いで手を洗ってから作業をすること。できますか?」
「それは、台風の時はどうしたら?」
「台風や大雨では、客も来ませんのでお休みにします。」
「そうだよね。」
「今日はシアンさんとヒロさんもいるから、どうやって動くか見ていてください。それでできるか考えてみませんか?」
「わかりました。見させてください。」
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