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「ああ、ごめん。畑を勝手に使った。どうしても試したくて蕪ととうもろこしを植えてみた。勝手にごめんな。」
「ごめんじゃないよ。ありがとうだよ。なんで?何をしても育たなかったのに、ここだけ違うみたいだ。」
「そうなのか。じゃあ、これも見てくれ。」
運んできたプランター類を家の壁近くへ並べてあった。
今までベランダに置いていたので、いきなり強い日差しはよくないかもとそこに置いたのだ。
「なにこれ、いっぱい生えている!」
ヒロが指さしたのは、育ってしまった元ベビーリーフたちだ。一度スキルで植え替えをしたけれど、シアンに預けている間にさらに育っていた。予定していた間隔では狭かったらしくまた密集状態になっていた。
「こっちの蕪はそろそろ食べられる。ミニトマトも花が付いているから、そのうち赤くなったら食べごろだ。」
「信じられない。こんな小さな入れ物で育っているなら、ここをリュウジさんと耕したらもしかして、沢山作れる?」
「やってみなきゃわからないが、できるかもしれないな。」
「やってみたい!」
「そうだな。試してみようか。種とかあるか?」
「種?倉庫に置いてあるかな?」
「倉庫?」
「うん、父さんと母さんがいなくなってから開けていないけど…」
「見てみようか」
「うん」
ヒロを先頭にシアンと二人でついていく。
玄関前の両サイドに建っていた建物の片方を開けた。
黴臭く、中が煙って見える。
「ゲホゲホ…これはひどいな、少しドアを開けておこう。」
隆二はそういうと扉を全開にして、もう片方の建物も同様にした。
窓が数か所あったので、入り口の対角線近くを1か所ずつ開けた。
倉庫の中に少しだけ光が差し込んだ。入口から中を見ているが、どうやら木箱が積まれているようだ。全部を合わせるとそれなりの数になりそう。あの空気の中にあったのなら、どれもかびているだろうか?
洗って、天日干ししてみるしかないか?その作業は子供たちにしてもらい、自分は畑を耕すのがいいだろうか?
「畑はどう使っていたか覚えているか?」
「えっとね、この倉庫の裏が野菜畑で…水路の向こう側は小麦畑だよ。」
「うん?毎年同じように使っていたのか?」
「もちろん」
「なるほど」
そうなると、同じ畑で同じ作物を作り続けた連作障害の可能性もあるか…。肥料を与えて違うものを植えれば何とかなるだろうか?
「ヒロさん、柵の向こう側もヒロさんの土地のようだけど向こう側はどうしていたかわかるか?」
「向こうも同じ。水路の先は広いから小麦畑にしていた。野菜畑の半分以上は芋で、残り半分はいろいろと植えていたと思う。」
「そうか、ありがとう。ところで、厠は1年ごとに場所を変えると聞いているが、どこが古くて、どこが新しいかわかるか?」
「ん…」
ヒロは少し視線を横にそらした。
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