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第3章からは副題なしにします。
更新ペースは、平日2話、休日は5話を継続の予定です。
翌朝、隆二は宿の部屋を2つとも引き払った.
ロティがいなかったので、言伝を頼む。
「リュウジさん、世話になったねぇ。」
「俺が世話になったんだよ。」
「もう都合してもらうのは無理だよねぇ。」
「いや…2週間に一度なら顔を出せるから、その時に都合しようか?」
「いいのかい?」
「ああ、もちろんだ。」
「助かるよ。」
女将さんが、耳元へ顔を寄せてきた。
「その時は、その背負いカバンだけで来て大丈夫だよ。そこから出しても私は気にしないからね。」
隆二は驚いて体を離して女将さんを見た。
リュックサックをアイテムバックだと思っているのか。そりゃそうか、あまりにも荷物が不自然だよなと気が付いた。
「わかったよ。次からは備蓄庫に運ぼう。」
隆二が参ったと両手を挙げて手を振ると、女将さんが豪快に笑った。
挨拶をして宿を後にする。
ヒロの家に戻ると、ヒロが奥から出てきた。
奥には2階へ行く階段があったようだ。
「今、二階を掃除したんだ。まだ足りないかもしれないけど、2部屋あるから2人で使えるよ。ベッドも2台あるし。」
「上がってみてもいいか?」
「うん、もちろんだよ。」
2階に上がると、階段の脇に個室になっている8畳ほどの部屋があり、正面には仕切りのない12畳ほどの部屋があった。
8畳にベッドが2台置かれている。
「リュウジさん、俺こっちの広い部屋のここを使っていい?」
「ん?構わないが」
シアンの言葉に、同意するものの広い部屋を使いたいなと思ってしまう。
「リュウジさんはドアが閉まる部屋が必要だろ?俺はベッドさえ置ければいいから、他のスペースは使ってくれればいい。」
「ん?どういう意味だ?」
「下の居間のようにとは言わないけど、二人で使う場所にしようよ。」
「なるほど…そういうことか悪いな…」
「リュウジさん、プランターやらいろいろあるだろ」
「そうだな、まあ…プランターは外でいいが…」
なぜか怒っているシアンの頭を撫でる。それならベッドを囲うための衝立のような物が必要だと思った。
買い出しに行きたいが、やることは多い。粥売りに出かけた日は、そのあとに必要な物を買って帰るようになった。
「ええ!?」
ヒロの大声に驚いて、裏庭に出た。
「どうした?」
「これっ…これ…」
ヒロの指差した先には、蕪の芽が出ていた。
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