104 来客
「でも、そうですね。畑を使えるのは楽しそうです。お借りする形でもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。使ってくれるならそれで…荒れているのを見るのも忍びなくて。」
「家は使ってもいいですか?それとも…」
「家は、住むには向かない。かなり古くてボロボロだ。冬の薪にしていい。」
「そうですか…」
「家を建てるなら大工を紹介することは出来る。」
「家なんて建てられませんよ。」
「建つさ。小さな家であれば金貨50枚もあれば建つ。そのくらいは稼いでいるだろう?」
「いや、どうかな…でもまあしばらくは通ってもいいですよね。」
「そうだな。そうだ…ヒロの家に住まないのか?それなら家は必要ない。」
「いえ、それは…ヒロさんはそう言ってくれますが、そういうわけにも…近所の目もありますし。」
「リュウジさんなら構わないだろう。近所の連中も、ヒロとロロナのことは気になっているが、自分たちで精一杯でなかなか構ってやれない。信頼できる大人がそばにいてくれるならその方が安心できる。」
「そうですか?」
「そうだ。向かいに住んでいるのはセドというのだが、そいつもそう言っていた。ヒロに仕事が見つかったのを心から喜んでいた。大人が一緒にいてくれるなら安心できる。もちろん誰でもいいというわけではない。リュウジさんなら、きちんと接してくれているからね。俺は信頼している。」
「そうですか…ありがとうございます。少し考えますね。」
「ああ、頼む。」
「そうだ。リュウジさん、この土地の隣からヒロの家まではヒロの土地だ。見ての通り荒れ果てている。この裏の区画は、別の人の持ち物だったが、ヒロの親に譲られていた。これだけの畑があれば、隆二さんならいろいろとできるのではないか?」
「へぇ…」
なるほど…ヒロの家に住めば160aを3面使えると言いたいのか。
ヒロの家と倉庫があるので、その分を差し引いても全部で450aくらいは使えるだろう。作物を作るには十分な広さであり、スライムを育てることもできそうだ。
周囲が構わない、むしろ安心だというなら問題は少ない。もちろん、畑を使っていいのかヒロに確認してからになるが…。
シアンの意見を聞いてみるか…。
一度ヒロの元へ戻る。
二人ともすっかり髪は乾いていたので、ベッドへ寝かせた。
ヒロの土地は、一緒に耕し俺が借りる土地は適当にやればいいか?
それに…ギルマスは人を雇って商売を続ける提案もしてくれたので、それもいいだろう。粥の作り方もそのうちに教えてしまえば、俺は完全に時間ができる。
シアンに聞いてみるか。
隆二は、翌朝シアンが来るのを待ち相談した。
「リュウジさんがそうしたいなら、それでいいと思う。それで…俺はどうしたらいいの?」
「シアンさんがよければ、ここに一緒に住もう。ヒロさんはシアンさんも一緒に住みたいと言っている。今までと違って畑作業もすることになる。週に3回、昼間の粥売りもあるし、スライムも続けるつもりだ。」
「そっちも?」
「ああ、そのためにはシアンさんの手伝いは欠かせない。」
「なんだ…よかった。」
「ん?」
「てっきり、もう面倒は見られないからって兵士に突き出されるのかと思って…」
「そんなことするわけないだろ。シアンさんも大事な子だ、心配するな。」
「あはは…俺、リュウジさんに悪いことしたのに、本当にお人よしすぎ」
シアンは緊張が解けたのか、泣いてしまった。
頭を撫でて、背中を軽くたたいた。
物音に振り向けば、ヒロが見ていた。
「ヒロさん、そういうわけで一緒に暮らしてもいいかな?」
「もちろん!」
ヒロが抱き着いてきて、ロロナも抱き着いてきた。
それから4人で朝食にする。
その日は、家の周囲を見て回り、1階の掃除をして時間が過ぎてしまった。
日が暮れる前に、隆二とシアンは一度宿へと戻った。
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