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 「もしよければ、土地はどうだろうか?」

 「土地ですか?」

 「ああ、使っていない土地で、今は枯れているが…リュウジさんなら使えるのではないかと思う…」

 「それはどうでしょうか?土地があればプランターよりは楽しめそうですが…育つかどうかはやってみないとわからないです。」

 「それはそうだが、それこそやってみなければわからないことだ。」

 「う~ん…農地を持つことでどんな権利と義務が課せられますか?」

 


 隆二の問いかけにギルマスは苦笑した。



 「前向きに考えてくれるなら、土地まで行こう…すぐ近くだ。」

 「ここが、俺の家だ。この裏だから突っ切る」



 ギルマスについていく。ギルマスの家は、ヒロの家の左横だった。

 区画の中でもお互いの家が寄っているので、少しの畑があるとはいえとても近い。

 歩いて5分だった。塀沿いに歩き水路を越え、畑を突っ切る。

 


 「義務は、芋や小麦を納める義務がある。具体的な量でいうと1区画につき木箱5箱分ずつだ。もっとも見ての通り誰も納められない状況なので、町長も求めてこない状態だ。もし収穫できるようになれば、求められるだろうが遡って何年分とは言ってこないだろう。」

 「なるほど」

 「それと…本来は商業ギルドでの活動には売り上げの4割を納めることになっている。」

 「そうでしたか、初めて聞きました。」

 「ああ、普段は…実際の売値なんて計算できない場合が多い。場所代をもらうことで、同等としている。」

 「ギルドの場所代は、確か無料だと…」

 「そうだ。今回は特別に無料にしている。金をもらうよりも、ギルドメンバーの命をつなぐ方が重要だ。農家は食べ物ができれば食べられるが、商売をやっているとそういうわけにはいかない。食べ物を手に入れられなければ、金銀財宝なんて持っていても意味がない。」

 「なるほど、それではそろそろ有料にしますか?」

 「いや、そんなことは言わない。昨日、粥を売りに来てくれてよかったよ。昨日は無理かと思っていたので、暴動にならなくて助かった。」

 「大げさな」

 「大げさではない。貴重な食べ物を手に入れる機会だ。それができなければどうなるか考えるだけで恐ろしい。だが、今回のことで考えた。リュウジさんにしかできないことも沢山ある。それなら、粥を作るのはリュウジさんだとしても、売るのは他の者でもいいかもしれない。」

 「つまり?」

 「人を雇わないか?売り上げも大金だから、ギルドで預かることもできる。もちろん手数料はもらうのだが…」

 「つまり、俺が粥だけを作りに行き、そちらの目の届くところで働かせて、売り上げはギルドで預かるから手数料は支払ってねと…本来の場所代替わりのようなものですか?」

 「まぁ、ギルド内での販売に限りだが…そうとも受け取れるか。」

 「ちなみに、そのお金の管理料はどうなりますか?」

 「管理料は、入金時にはそのまま預かる。引き出しの時に引き出す金額の1割を手数料としてもらう。それとは別に年に一度、最終日である12月25日に残高の0.5%を口座管理料としてもらう事になっている。」

 「なるほど。売り上げの4割よりは破格ですね。」

 「ああ、それに…12月24日に全額引き出せば0.5%も掛からないからな。」

 「そうですかね…」

 


 大金を持っているくらいなら預けっぱなしのほうが安い。何度も出し入れすると、都度1割だが、預けたままであるなら年に0.5%の目減りで済む。

 俺ならばその金をインベントリや財布にしまっておけばいいが、異空間収納がない人であれば気が休まらないだろう。

 ギルドに預けられるなら、安心できる人が多そうだ。

 人件費を支払い、いくら残るのかはわからないが、マイナスになることはなさそうだ。それなら、自分の時間を作れたほうがいろいろとできるか…。検討してみるか。



 「リュウジさん、ここだ。」

 


 案内された場所は、ギルマスの土地の裏手で、同じ広さの区画がボロボロの柵で囲われていた。



 「この辺りは、同じ広さで区画が決められている。全面で160aあるが、家建物もあるので畑としては130前後だろう。」

 「なるほど…一家で使うにはちょうど良い広さなのかな…」

 「そうだな。順調に収穫ができていたころならそうだと思う。この間の薬の礼はこれでいいか?」

 「う~ん…土地をもらうのは気が引けます。ずっといるかはわかりませんし…」

 「そうか…」

 


 土地と言っても、たぶんギルマスでは使いようがないから、いらないのだろう。

そして、ヒロの家にも近い。俺がプランターで野菜を作っているから、丁度いいくらいの発想だと思った。

 多分、土地の価値は合ってないようなものだ。




読んでくださりありがとうございます。


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