102 風呂上り
残り湯は外へと運んだ。
石鹸の入っている方は、畑から離れた家の前の道へと撒いてしまう。最後に浸かっていた湯は畑へ撒いてしまう。桶と盥を洗い、水路の水で汚れを落とし、壁によりかけて乾かす。
家と畑の間には、細い水路があった。100mほど向こう側に流れている川の水のようで、畑に使っていたのだろう。
周囲の畑はどこも枯れている。水路が通っていて水が十分にあるのにおかしな表現だが、それほどに雑草すら生えていないのだ。
シアンは毎日顔を出すので、その時に食事を与え、宿へと持ち帰らせていた。ベランダのプランターの世話も頼んでいる。
ヒロとロロナといてわかったのは、二人とも生活のためにすべきことを知らない。親が残してくれただろう物を使いこなせていなかった。
そして、顔を洗う、歯を磨くなどの基本さえままなっていない。
ここまで世話をしてしまうと、気になって仕方ない部分はある。
ヒロのケガは治ってはいるようで、普通に動けているように見えた。そうはいっても、応急的な修復だろうから気を付けないといけない。本当の意味で治るにはそれなりに時間がかかるものだ。
だが、親でもない他人がどこまで手を出していいのかもわからない。それに、ここにいるのがいいのか悪いのかさえわからない。
ロロナがもう少し育つまで一緒に生活して、日常のことを教えるのも悪くない気はするが、そこに何が不随してくるのかと考えると気が重い。
風呂上りの二人には、麦茶を飲ませた。ペットボトルの麦茶を湯冷ましで薄めたものだが、二人は美味しそうに飲み干した。
風呂は体力を使う。髪が乾いたら眠らせてやりたいが、ドライヤーがないのでなかなか乾かない。タオルドライはしっかりしたので、もう少し待つしかない。
「ロロナさん、もう少し起きていられないか?」
「ん~むりぃ…」
ロロナがテーブルに突っ伏して眠ってしまった。でも、これはこれでいいのか?髪を下にすると蒸れてしまうが、この態勢であればその心配はさそうだ。
「ヒロさん、ロロナさんが落ちないように見ていて」
「うん、わかった。」
隆二は物音のした玄関へと顔を出した。
客は涙目で、ヒロたちから隠すように外へ出た。
「ギルマスでしたか。どうしました。」
「リュウジさん、ありがとう。妻と息子が起き上がれるまで回復した。」
「それはよかった。」
「本当にありがとう。それで、お礼なんだが…」
「はい?」
「少し出かけられるか?」
「はい、まあ。少々お待ちください。」
隆二は、家の中にいるヒロに「少し出かける」と声をかけた。
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