100 懐かしい朝ごはんの味
隆二には、罪悪感があった。
昼だけの仕事とはいえ、その報酬が粥1杯だけだ。
ロティが屋台を出している時の倍の量があるとはいえ、米に換算するとかなり少なめの3分粥であり、隆二から見るとほとんど重湯のような粥だ。
小銀貨2枚とどちらがいいかと確認してはいるけれど、本当にいいのかと思ってしまう。
でも…絶食状態が続いた後に普通の食事をしてはいけない。
死んでしまうから少しずつから始めなくてはいけないと言われて育った。
農家育ちだったから、両親や祖父母は朝早くから畑に出てしまう。
幼い頃に看病をしてくれたのは、曾祖母だった。
戦争を経験した人で、絶食後の食事に厳しいのはつらい経験があったからだと、祖母が教えてくれた。
どの程度から、どのくらい食べさせていいのかは正直わからない。
シアンの時も3回ほど薄い粥を食べさせて様子を見てから、固形物に変えていった。シアンの話を聞く限り、畑に作物が実らないという。
自分の知識があれば、ある程度は畑で収穫できるように出来る気がしていた。
だけど、この世界の農業にも当たり前があるだろう。それを知らないし、地球と同じ方法がこの世界で同じように通用するのかの確信は、薄かった。プランターでは育てられるし、腐葉土も効果はある。
その腐葉土も森から運び出せばいずれなくなる。
そもそも、森から運び出すことが彼らにできるのかはわからない。
森に出入りをすれば、あの大きな熊のような獣とも遭遇するだろう。それに立ち向かう方法もわからない。羆のように皮が厚く警察官が持つピストルでは太刀打ちできない獣かもしれない。そうであったらハンターが持つような銃火器が必要だろうけれど、手に入れる方法はわからない。
兵士たちが腰から下げているサーベルは、刺さるのだろうか?
あれが、本当に刃物なのかも隆二にはわからないし、抜いたところを見たことはなかった。
「わからない物は、わからないな…」
売るものを少しずつレベルアップさせていくことで、食べ物を摂取することによる急激なショック状態は避けられるだろうか?
もっとも、それはこの町の人に限る。
他の町からやってきて、食べ物を手に入れてもりもり食べるのはリュウジにもコントロールはできない。
隆二は、森に来ていた。
数種類の竹を収納し、草も数種類採取した。
あとは…リラックスしよう。
木の近くに車を出し、窓を開けた。
「ここなら、なんでも食べられるな…」
「今日は何にしようかな…」
隆二は、アイテムリストを見ていた。
にんにくマシマシシリーズかカレーか…いや、今日はシンプルにいくか。
パックご飯と納豆と生卵を手に納豆卵かけごはんを作る。
ラーメンのどんぶりにごはんを移す。
そこによく混ぜた納豆を乗せて、さらに納豆のパックで卵もかき混ぜた。
卵もかけた納豆ご飯は、一口食べると懐かしい美味しさだった。
「うまっ」
ずるずると食べ終わると、ティッシュで口回りを拭いた。
やっぱり匂いはするなぁ。
納豆卵かけごはんは毎朝食べていたもので、久しぶりに食べてもやはり美味しい。ずるずるとするし納豆など宿ではとても食べられないのが残念だ。
シアンやヒロにこういう懐かしい食べ物はあるのだろうか?
あるのならいつか食べてみたい。
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