1 転移
初投稿です。
「隆二くん、いつもありがとね。」
「小林さんもお加減よさそうでよかったです。」
「気にかけてくれてありがとう。次はいつ来るの?」
「また金曜日にお伺いします。」
「それなら、卵と牛乳をお願いしたいの。」
「では小林さんのスマホで一緒に注文しましょう」
小林さんがスマホのロックを外すと目の前に差し出すと、隆二は「失礼します」と受け取った。
小林さんに見えるようにアプリを開いて、コードを打ち込み、商品を選択すると画面を見せた。
画面には、卵6個入りと牛乳500mlの画像と価格が出ている。
「これとこれでいいですか?合計406円になります。」
「それでいいよ。」
「これでよければ、ここのボタン押してください。」
「はいよ。これでいいかい?」
「はい、注文できましたね。金曜にお届けします。」
「いつもありがとね。頼むね。」
「はい。ではありがとうございました。」
隆二は、客の玄関先で宅配商品を渡した。
コンビニの宅配をしていたが、冷凍弁当の定期コースもある。半数は定期的に訪れている客宅だった。
そのほとんどは、成人した子供が離れて暮らす親への注文だった。それに加えて細々とした物の注文もあった。もちろん、不定期の客もいてその相手も様々だった。
小林さんは、おしゃべり好きなおばあちゃんでいつも5分はかかってしまう。
この家には、立派な庭があったようだが庭木の手入れが追い付いておらず、道路までの道の雑草だけが抜かれていた。住宅街のため、近隣の住宅の2階以上だけが見える。
玄関先に止めた車は、軽自動車より横幅が少し狭いミニカーだった。車体は白だが、青と赤のロゴが大きく書かれていて、どのから見てもどこのコンビニかわかる。
車に乗り込んで運転席に座った瞬間、隆二は眩暈に襲われた。
あれ?貧血か?
目をつぶっても回転しているような感覚は間違いなく眩暈で、落ち着くのを待つ。治まったら水筒の水を飲んで…いや、もしかしたら脱水状態だろうか?家を出てからの水分補給が足りていないか?配達にでてからの水分補給をしていなかったことを思い出した。
眩暈が治まるのを待ち、ゆっくりと目を開けた。
伸び放題の庭木は消え、道路までの舗装された道も消え、一面が美しい野原だった。
は!?
隆二は、目を閉じている間に寝落ちたのか?と思い、頬を叩いた。リアルな感触だったが、どうにも目の前の光景が信じられないためいろいろと試した。
後ろを見れば、配達待ちの荷物の入ったコンテナとアイスボックスが積みあがっている。俺は仕事中で間違いない。早く目を覚まさないと、配達の時間に間に合わない。そう思って焦るのだけど、目覚める気配?はない。どうやってもやはり現実にしか思えない。
ルームミラーに自分を映してみるが、冴えない28才の自分が映っていた。
車を降りればいいのか?足の感触で夢だと気が付くかも?
降りてみると、草原の柔らかい感触と青臭い草の匂いがしていた。
頭がすっきりとするけれど、どうにもこれが現実のように思えてきた。足元の花を摘んでみるが手に触れる感触が妙にリアルだ。
これはあれか?もしかして、異世界転移とかいうやつか?なろう系漫画でよくあるやつか?
いやいや、いくらなんでも馬鹿げている。俺は寝ぼけているか、うっかり知らない場所に来ただけなのでは?
そう思うものの、試してみたくなる。
「ステータスオープン!」
口に出したものの、やっぱり恥ずかしい。
隆二は一人見悶えたのは、何も変わらないのも原因だ。ステータス画面は現れなかったのだ。
異世界転移じゃないとしたら、なんだろう?
やっぱり夢の中だろうか?
あっ!
スマホでマップを見ればいい!
ここがどこか分かれば、どうやって戻るのかもわかるはずだ。
誤字脱字、表現などいろいろと間違いがあるかもしれません。
できるだけ優しく教えて欲しいです。
話はまったりと進める予定です。