第5話 NULLの内側
NULLの指輪を持つ少年──その出現により、空の“孤独な力”は戦いの道具へと変貌する。
そして今、空はNULLの“裏側”に堕ちる──。
放課後の校舎裏。
見知らぬ生徒の指輪が、不気味な光を放つ。
「君は、今日、存在しなくなる」
目の前が、真っ白に塗りつぶされた。
……時間の感覚が狂っていた。
3分間のはずなのに、無限に続くようにも、一瞬のようにも感じる。
空は“白い空間”に放り込まれていた。
足元の感覚も、時間の流れもわからない。
ただ、背後から“誰かに見られている”ような感覚だけが確かだった。
――「お前もか」
声。
空の背筋が凍る。
誰もいないはずの場所で、“それ”は確かに語りかけてきた。
「NULLの力を与えたのは、誰だと思う?」
(誰だ……お前は……)
ピンッというような感覚とともに、世界が戻る。
気がつくと空は、校舎の裏で膝をついていた。
呼吸が苦しい。
胸が締めつけられる。
「……っ」
男の姿はもうなかった。
翌朝。
HRが始まる前、空はふと黒板に目を向けた。
見慣れない名前が書かれていた。
【転入生:黒崎 真】
空気が一瞬、凍る。
生徒たちがざわめく中、扉が開いた。
「よろしく──黒崎です」
昨日の男だった。
“黒崎シン”──指輪を持つもうひとりの存在。
彼の目的、そしてNULL空間の真実とは何なのか。
次回、第6話「転校生」。