第4話 干渉者(インターフェア)
NULLの存在は、空の中で徐々に“孤独な力”ではなくなっていく。
そして、姿を見せ始めた“もう一人”──
世界は静かに変わり始めていた。
翌朝。
登校途中の白河空は、ふと背中に寒気を覚えた。
振り向く。誰もいない。だが、その“無”が、妙に気になる。
(まただ……最近、誰かに見られてるような感覚が消えない)
学校に着いても、空の違和感は晴れなかった。
クラスでは、女子の間である噂が広まっていた。
「また、スマホに変な通知きたんだよね」
「“消したい人はいるか?”って。なにあれ、ホラーすぎ」
空の胸が強く脈打った。
(まさか……俺以外に、NULLのことを知っている人間が?)
昼休み。空のスマホにも通知が届く。差出人不明。本文なし。
表示されたのは、ただ一文。
【次は、君の番だ】
空気が変わる。教室の音が遠のいていく。
背筋に汗が伝い、喉が詰まる。
ふと、教室の後方に視線を感じた。
そこに、見慣れない生徒が立っていた。
黒髪、無表情。誰とも話していない。
だが──空と目が合った瞬間、そいつは微笑んだ。
ゆっくりと、右手を上げる。
そこには、空と同じ黒い指輪があった。
放課後。空は、その生徒がひとりで昇降口に向かうのを確認し、後を追った。
校舎の裏手。人気のない場所で、ついに言葉をかける。
「……お前、誰だ」
男は振り向かず、ただ言った。
「俺は、先に“NULL”を知っていた。ただ、それだけだよ」
空は警戒しながら、足を止める。
「なんの目的でこの力を使ってる」
「君と違って、俺には消したいやつがたくさんいる」
男はそう言って笑い、ポケットから何かを取り出した。
携帯。画面には、次に消すべきターゲットの名前が浮かんでいた。
そこには──
【白河 空】
空の指がわずかに震えた。
男は一歩だけ前に出て、囁くように言った。
「君は、今日、存在しなくなる」
空の前に現れた、もう一人の指輪保持者
NULLを力として使いこなす彼の目的は、空を“世界から消す”ことだった。
次回、第5話「NULL対NULL」。