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第12話 止まったままの時間

どこかで聞いたような声。

見覚えのある表情。


でも、それを“いつどこで”と問われれば、思い出せない。

空は、ことねという存在に揺さぶられていた。

放課後。下校のチャイムが鳴り終わった教室に、空だけが残っていた。


机に頬杖をついたまま、ぼんやりと窓の外を眺めていると、背後から軽い足音。


「まだいたんだ」


ことねだった。


「……なんでお前、いつも俺の行動察知してんだよ」


「別に。帰り際にちょっと覗いただけ」


ことねは教室の入り口に立ったまま、空を見ている。


「お前ってさ……」


空は何かを言いかけて、一度止めた。


「……お前の声、なんか……昔どっかで聞いたことある気がするんだよな」


「へえ。それ、よく言われる」


ことねは笑った。でもその笑みは、どこか演技っぽくも見えた。


「でも……なんでだろな。何年も会ってなかった人に、急に再会した時みたいな……変な感じがする」


「ふーん」


ことねは教室に入ってきて、空の前の席に腰かけた。


「じゃあ、あなたは私と再会したってことね」


「いや、だからそういう確信はないけど……」


「でも、“前に会ってた気がする”って思うこと自体、なにか理由があるのかもね」


意味深な言い方に、空は少し眉をひそめた。


「ま、気のせいかもな。お前とはクラスで初めて話したはずだし」


「そうだったっけ? 私の記憶では、もっと前から……」


そこまで言いかけて、ことねは口を閉じた。


「……なんでもない。忘れて」


教室に夕陽が差し込む。沈黙が、しばし流れた。


「じゃあ、またね。空」


そう言って立ち上がると、ことねは教室を後にした。


空は一人、残されたまま呟いた。


「……なんなんだよ、お前」


ことねの言葉に残った違和感。

その意味を探る暇もなく、空を巻き込む新たな出来事が始まる。

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