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懺悔

 森が、泣いていた。


 ザアア、と終わりなき音の連続が響いている。

 その音の正体は、雨だった。


 雨が煤のように黒い夜空から降り注ぐ。すべてを洗い流す優しい雨とも、すべてを罰する無慈悲な雨とも表現できる。そんな印象を抱かせる雨が、森の木々を濡らしていた。雨粒は葉に受け止められ、大きな滴と化して地に落ちる。何千枚、何万枚もの葉が涙のような滴を垂らしていく。


 その光景はまるで、森が泣いているようだった。

 そんな森の中央を貫くように細道が通っている。その細道で向かい合う二人の人物がいた。


 一人は、女だ。女は左腕を腰に据え、不憫そうな眼差しを飛ばしている。

 もう一人は、少年だった。少年は嗚咽を洩らし、地面に拳を押し当てながら蹲っている。衣服は赤黒く変色していた。

 それは血だろう。篠突く雨でも拭えないほどの血が、少年の衣服に染みついていた。


「殺して、ください」


 少年が縋るような声で願う。


「僕は、許されないことをしました。罪もない人たちに、たくさんのひどいことを、してしまいました。だから、罰を与えてください。楽に、させてください。ごめんなさい、ごめんなさい」


 それはさながら、懺悔だった。

 女は表情を一切変えないまま、淡々と確認する。


「楽になりたいんだな?」


「は、い」


「……わかった」


 女が頷くと、突如として純白の光が生まれた。その光は、凄まじい勢いで膨張を遂げていく。


 少年は、光に身を委ねるように緊張を緩めた。そのまま、安堵と幸福に包まれたような表情で瞳を閉じる。光は、少年の身体を瞬く間に覆い尽くす。

 そうして、少年は死んだ。

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