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7話 お酒は二十歳になってから!

「じゃあ、記憶がないってことにしていい?

 黒魔術になんかされて、自分が誰かも分かんなくなっちゃったって設定で。」


「そうですね…

 下手に本人のふりをするより、その方が安全なのかもしれませんが…」


皇后のその後の言葉が怖い。

やっぱりぶりっ子して皇帝を垂らしこんでおけとでも言いだしそうだ。


「よし。それでは契約の話に入ろうか。」


言わせない!!!!


「ええ、私は構いませんが…体調はもう良いのですか?」


一応心配はしてくれるんだな。


「頭が痛いが、あとは特に不調を感じない。」

「そうでしたか。

 医者はワインのアルコールを皮膚が吸収したせいで赤くなり

 お酒が回って火照っているのだろうと言っていましたから。」


あ…

なるほど…

アルコールパッチテストみたいなものか。

私が眠る前の異変…

あれはワインを吸ったドレスが直接肌に当たったところが赤くなり

ワインが染みる前に着せられた下着の部分は白いままだったという訳ね。


いつだったか。

学校の健康診断でアルコールパッチテストをやった時

二の腕に貼ったところが真っ赤になって、君はお酒飲まない方がいいよって言われた記憶がよみがえる。


「その頭痛も二日酔いのようなものでしょうね。」

「この体は酒に弱いのか?」

「私は存じ上げませんが、陛下はそのように仰っていました。」


お酒に弱いのは、本当の私の体と一緒だ。


(やまい)がどうのとも言っていなかったか?」

「ああ。あれは、数年前に首都で全身が赤くなる流行り病がでたそうで、

 医者は念のためにそれも気をつけるようにという意味で言っていたのです。」


なんとなく腕をまくってみたが、赤みはもう引いている。


…あの馬鹿皇帝、医者にも呆れられていそうだな。

皇帝という立場を理解しているのなら、愛した人であってもみだりに病人に近づけるはずがないのに。

病だなんだと医者が言ったのは、どれだけ皇帝がのぼせ上がっているか見るためだったんじゃないか?

皇后が何かする間もなくあんな皇帝は失墜しそうな気がするけどな。


「流行り病であればすぐに赤みが一晩で消えることはないとも言っていましたから、

 病の心配はしなくてもよいでしょう。

 それにかかっていたとしても、風邪のような症状で

 命にかかわることは少ないそうですから。」


ふうん。

あの馬鹿皇帝、風邪になって公務を休みたかったのかもしれんな。


「さて、本題の契約ですが。」


きたきた。


「わたくしはグラティッシマ嬢と皇帝の失脚

 社交界や皇室での彼らの信頼の喪失が目的でした。」


そう来るだろうな。


「グラティッシマ嬢に悪魔の印を刻み

 悪魔と繋がった者としてここから追放、

 悪魔を皇室に招き入れた間抜けとして皇帝は信頼を失う。

 そういう筋書きでした。」


ふうん。

その間抜けな皇帝を制御できなかった“間抜けな皇后”と思われることはないんだろうか。

皇室の信頼は一蓮托生。

皇帝の不始末は皇后の不始末と思われそうなもんだけど。

まあ、ご都合主義な展開なんてよくあるし

作者が冷静で賢い皇后としてるんなら、きっと未来も皇后の予想通りになるのかもしれない…。


「今では、愛人1人管理することができない皇后…と、

 社交界では随分とわたくしのことが話題にあがるようですが。

 悪魔に魅入られて操られた皇帝のせいにすれば

 少しは噂も変わるでしょうか。」


皇后は自嘲気味にそう言った。

自分の立場を案ずるような言葉を言ったことが可笑しかったんだろう。

知ってる。自分の立場がどうのこうのという問題ではないのだ。

それは裏切られた悲しみだよ。

自分は感情に左右されてる訳ではないと思いたくて、対外的な理由をつけただけ。

自分の本心に気付けていない意地っ張りなキャラクター。

…異世界転生漫画とか小説に慣れすぎて全部読めるわ。


「それで、最終的に皇帝と離婚したいとか?」


「…離婚ですか…?

 いいえ、致しませんよ。

 皇后になるために生まれて、育てられ、この地位だけがわたくしの全て。

 わたくしには皇室の血が流れていませんからね、

 あの皇帝と離れれば、わたくしには行くあてがないのです。」


そっか、なんか…ちょっとは現実的なんだな。

確かに。

物語ではひょこっといい男が現れるけど、

実際問題そんな貰い手はいないし

いい歳した娘が出戻ったとして、両親としては困るだろうな。


「わたくしの目的は分かっていただけたようですね。

 では、悪魔様はどのようなことをして下さるのでしょうか。」



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