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4話 重いドレス


侍女が人を集める間に、私と皇后はあの冷たい石の部屋から出て

長い廊下にワインの赤い跡をつけながらゆっくりと歩いていた。


向こう側からどんどんと、何人もの慌ただしい足音が近づいてくる…

なんか、緊張してきた…


「悪魔様、」

皇后がじっと私の顔を見る。

え?何?緊張してるのばれた?


「失礼ですが…

 悪魔様がその娘に入る前と今とでは、似ても似つかぬお顔をしておりますので…

 顔を伏せて、私に寄りかかるようにしていて下さいませんか。」


「わ、分かった。」

え、今私どんな表情だったん??


「ちなみに、元のこの体の主はどんな顔をしていたのだ。」


「愚鈍なタヌキのような顔です。」


愚鈍なタヌキ・・・・

どんな顔よ、

どうやって表情つくりゃ良いのよ、


そうこうしているうちに足音がすぐそこまで迫ってきて、

私は皇后の肩に額を置くような形で顔を伏せた。


「こっ、これは…!何事です!」

「皇后様!」

悲鳴のような声が何重にも聞こえてくる。


「あの部屋でグラティッシマ嬢が倒れていました。」


皇后は困惑して疲れ切ったかのように声を絞り出す。

かなり演技派だ…


「手をおかしします!」

「早く着替えを!」

「ああ!なんてこと!」

「体が冷えてしまいます!すぐにお部屋の暖炉に火を!」


何人もの女が私たちを取り囲む。


「グラティッシマ嬢を客室に寝かして差し上げなさい。」

「はい!」


「グラティッシマ嬢、気を確かに。」

私は顔を伏せたまま小さく頷いた。


「このものに着いてゆき、しばらくお休みなさい。」

こくんともう一度頷く。

命令口調…ということは、この体にいたグラティッシマという女は皇后より身分は下なのね、

当たり前か、皇后より高い身分の女性なんていないもんな。


「こちらへ。」

頭を伏せたまま声のほうを見ると、白のメイド服を着ているようだ。

メイド服で白とな…

とりあえずそのメイドについてゆく。

私の後ろからも何人かのメイドが着いてきているようだ。


皇后を取り囲む大勢の人の声が遠ざかって、

どこかを曲がって階段をあがり、また曲がって…


「こちらです。どうぞお入りください。」

と言われた頃にはもう元の場所に帰れそうにもなかった。


部屋に入ると、さっとメイドたちが取り囲んで

さっき着たばかりのドレスを脱がせていく。

体がどんどん軽くなる。

ふう…


あと少しで素っ裸というところまで脱がさせると

先ほど全裸シーンがあったとは言え、流石に恥ずかしい。


コンコンとノックの音がして、こんな下着で入って来るなんて!

と思って振り返ると、いつの間にか衝立が置かれていた。


配慮だ。

すごい。


入ってきたのはまたも白い服のメイドで

桶と白い布をワゴンに乗せていた。


何が始まるんだ…!と内心テンパる私をよそに

あれよあれよと下着も含め全ての衣服をもっていかれてしまった。

これでいいんだよね?

貴族の女性って使用人に何から何まで全部やってもらうものだよね?

と抵抗せずに手を広げたままじっと耐える。


「失礼いたしま…」

驚いたように息をのんだ1人のメイドが他のメイドたちと目を合わせる。

え、何々!

まさか時間差で悪魔の印が?

と思って慌てて体を見渡したが見える所にそれらしきものはない。


「グラティッシマ嬢…これは…」

体の一部の皮膚が赤い。

下着の部分はあまり赤さはないようだけど…

赤くなった二の腕の部分に触れてみると熱を持っている。

なんだこれ…

悪魔の儀式のなんか副作用的な…?

そういえば、頭もいたいしなんだかぼんやりする、


「グラティッシマ嬢…?

 急ぎ皇后様に伝えなさい!

 宮廷医を呼んだ方が良いと…!」


バタバタと一人のメイドが走り去る。


「急ぎ体を清めます。」

手際よく桶で絞った布で、体や髪を拭かれて

ネグリジェを着せられると

ベッドに横になった。


だめだ、ぼうっとする…

頭がいたい。

顔が熱い。


もしかして、この体の本物の魂ではない私が入ったことで

体が反発しているのかな。

私はこの体から追い出されるのかもしれない。

そして愚鈍なタヌキのような顔の女が戻ってきて…

そしたら私はどうなるんだろう…

私は…元居た世界に戻るのかな…

元居た世界…

私は…

わたしは…




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