じいちゃんの作る焼きそばはめちゃ美味かった
「ただいま」
「おう、おかえり」
門を潜る前から匂いで解った。
今夜は焼きそばだ。
「遅かったな。遊んできたとか?」
「うん、散歩してきた。海の方面を中心にね」
「ほー、若いなぁ。よー体力のもつばい」
彼女の事は出来るだけ秘密にしておきたい自分がいた。
出会ったばかりだし、好きとかそういうのも無いが、俺は心のどこかでは彼女を特別な友人と思っているのかもしれない。
とにかく、彼女と知り合った事は俺だけの秘密にしたかったんだ。
「ほれ、出来たぞ。分けてやっけん、皿ば寄越し?」
皿を渡すと、じいちゃんは見事なヘラ捌きで鉄板の上の焼きそばを取り分けてくれた。
イカやエビなどの海の幸がメインの海鮮焼きそばで、ソースの香りに加えて美味しそうな魚介の香ばしい匂いが食欲を刺激する。
後から聞いた話だが、じいちゃんは昔、海の家で焼きそば屋を営んでいたらしい。
先程のヘラ捌きといい、この美味しそうな焼きそばといい、なるほど、納得できる。
一口食べてみる。
んーッ!
焼き立ての麺はほんのりと焦げており、それが何とも言えない歯応えとなっている。
甘辛いソースが舌に絡み、エビやイカのぷりっとした食感や風味が更に包み込んでいく。
駄目だ。箸が止まらない。
「ははは、そんなに美味かか?そぎゃん喜んで掻き込むんなら作った甲斐のあったばい」
焼きそばを頬張る俺をじいちゃんは満面の笑みで見ていた。
食後のデザートはスイカだった。
じいちゃんと一緒に縁側に座ってスイカを食べる。
「平助」
「ん?」
「明日は何かやることあっとね?」
「んー、今んとこ特に無いから軽く宿題進めようかなって思ってる」
「勉学か。関心関心…」
スイカを食べ終わり、風呂に入って歯磨きも済ませた。
布団に入り、俺は海の事を考えていた。
また明日会えるかな。でも、そううまくいくように人生はできていない。
十二年も生きてればそんな事ぐらい解る。
でも、もし会えたら…
考えているうちに、俺の意識は辺りから木霊すカエルの鳴き声に包まれ夢の中へと沈んでいった。