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海はこの駄菓子屋の反対側。つまり、一度じいちゃんの家に引き返し、また長い距離を歩かなければならないというわけだ。


まずい、五円玉チョコが…。



「でも、着く頃にはチョコが…」


「じゃ、走るか。急ごう!」



そう言うや否や、彼女は俺の手首を掴んで走り出した。



「うわっ」



引っ張る力が意外に強く、こっちが踏ん張ろうとしても容易く引っ張られていく。

俺はすぐに諦め、彼女のなすがままに身を任せることにした。



風が涼しい。

そう、部屋の中で風鈴の音を聴きながら扇風機を回すのも良いが、こうやって自分が走って風を感じるのもまた夏の楽しみ方の一つなんだ。

まぁ、いくら涼しくてもこの季節は特に太陽の熱が半端ないからあんまりオススメはしないけど。



彼女のシャンプーだろうか、なびく髪からトロピカルな香りが風にのって鼻に…


…あんまり詳しく書き過ぎて変態呼ばわりされても困るからここらへんでやめておこう。




しばらく走ってると、潮の香りが辺りから漂ってきた。


白い堤防、青い海と空。



ああ!やっぱり夏の海は最高だ!




堤防の上に登り、二人並んで座る。


お菓子の入った袋を恐る恐る覗く。

良かった。チョコは問題無いようだ。



「飲もうか」


「うん」



二人一緒にラムネの栓を空ける。

多少中身が外に溢れ出るのだが、これもまた夏の風物詩なんだ。


乾杯し、一気に喉に流し込む。

火照った身体を潮風が冷やし、内側からキンキンに冷えたシュワシュワのラムネが染み渡る。


くぅー!これこれ!


隣を見ると海も一気に半分ぐらい飲み干し、「ぷはぁーっ!」と満足そうに言った。



「美味しいな、平助!」


「うん」



それから俺達は互いに買ってきたお菓子を分け合うようにして一緒に食べた。

二人で海を眺めながら飲むラムネは格別に美味しかった。



「海さん…」


「呼び捨てで構わないよ。私も“平助”って呼んでるし」


「うん。海、さっきのハイレモンとヨーグレット美味しかった?初めて食べるつってたから」


「そうだな…。ヨーグルト味はなかなか美味かったけど、レモン味はちょっと私には酸っぱすぎたかもな…。まぁ、これもこれで美味かったけど」


「あはは、まぁ確かに酸味強いからね」


「ふぅー、もう少し眺めてから帰るか」


「うん」



それから俺達は日が傾き始めるまでこの堤防で色んな話をした。

俺の山須での暮らし方や、海が奨めるここ笹水での過ごし方。

海には綺麗な魚がいるだとか、林や森にはカブトムシやクワガタがいるだとか。


楽しい時間はすぐ過ぎる。

あんまり遅くなるとじいちゃんが心配するかもしれない。

俺達は帰ることにした。

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