畳の香りと風鈴の音色
電車に揺られた疲れが出始めたのだろう。
今俺は眠気に襲われ、二階にある自室の畳の上に寝っ転がってる。
まだ昼御飯は食べていなかったが、来る途中で食べてきた例のおにぎりは意外と量があり、腹に溜まった。
畳越しにテレビの音が聴こえる。多分じいちゃんだ。
今、俺の部屋にはエアコンが備え付けてあるが、勿論稼動させていない。
代わりに窓を全開にし、扇風機を回している。
時折鳴り響く金魚鉢柄の風鈴が涼しい音色を奏でる。
これだよ。これこれ。
さっきも言った通り俺の家も結構田舎なんだけど、ここまで風情のあるシチュエーションにずっと憧れていた。
本当に夏って最高。
しばらくして喉が乾いてきた。
勿論冷蔵庫にある麦茶やさっきの飲みかけのコーラを飲むつもりはない。
さっき軽く机の引き出しを漁ったときに見付けた手作りの地図。
きっとじいちゃんが作ってくれていたものだ。
そこにはこの辺一体の店や施設の位置が詳しく書き連らねられていた。
そのなかに見付けた小さな「駄菓子屋」という文字。
そう、俺が求めているのは“ラムネ”だ。
財布を掴み、地図を小さく畳んでポケットに突っ込む。
階下に降り、じいちゃんに言う。
「ちょっと出掛けてくる!」
「おう、気を付けて言ってきんさい」
門の外に出た時だった。