-Chapter2-
松岡千秋です。
よろしくお願い致します。
-Chapter2-
優木瞳は失意の中にいた。
幸いな事に友人には恵まれていた。
夫が亡くなった彼女を諭し、生命保険の請求をさせた。
しかしながらその行動は、自らの心を削る結果となる。
死亡保険金の支払いは拒否された。
保険料は支払われていたが、告知書の不備により、責任開始日前だったのだ。
千紗は通夜に出向いた。
どう声を掛ければ良いか。彼女の声を聞くのが怖い。
帳簿に記入し席に着く。
経が唱えられている間、孝也の声が頭をめぐる。
やがて読経が終わるが、様子が変だ。
棺は空だった。
孝也は事故や病気で死んだのではない。
殺されたのだ。
バラバラに切り刻まれた状態で発見されたらしい。
彼だと判明するのにも時間が掛かるほどに。
更に不審な事にドッグタグは発見されなかった。
身分証明証であるタグは誰かに不正利用されることは無い。
登録された生体情報が合致しないとただのガラクタだ。
もちろん個人資産を取得することもかなわない。
以上の話は瞳から聞いたものではない。
千紗が聞いた心無い噂話の総合だ。
「お悔やみを。」
ああ、とうとう瞳の眼前に立ってしまった。
前にもこういう場に来たことはある。
それは知り合い程度の人間だったし、棺に遺体もあった。
そのどちらでもない状況など初めてのことだった。
無言――。
気まずい。ただただ気まずい。
きっと彼女にとって、私は「敵」になってしまった。
「……千紗ちゃん。保険金、出ないんだって。」
「はい……申し訳ありません。」
私が悪いわけではない。無論、彼女も。
そんなことわかっているが、彼女は私を責めるし、私は彼女に罪悪感を抱く。
「千紗ちゃん、あなたにずっと支えてもらったわよね。」
「はい……」
「長い事、お世話になってた。」
「……」
「決して、安くはない保険料を、いっぱい払った。」
なんだ。どう返せば正解だ。
いや、言葉を返さないのが正解なのか?
そもそも正解ってなんだ。私はどうしてあげればいい?
「助けてもらったこともある。今回だってそう。
助けてもらえると信じたからあなたを頼ったの。」
「そう、ですよ、ね。」
「あなたを信じたから。」
痛い。言葉とはこれほど痛いのか。
心臓が背中に引き寄せられる。
一刻も早く逃げ出したいと叫んでいる。
「国がね、自助努力をしましょうって言ってたの。
もしどっちがいなくなっても、子供には幸せに生きて欲しいって思ったの。
全部ね、あのひとと決めたの。」
ああ、こんなことなら。
「私たちは、見捨てられたの?」
このひとたちに出会わなければよかった。
何卒、よろしくお願い申し上げます。




