-Chapter18-
松岡千秋です。
よろしくお願い致します。
-Chapter18-
「……ねえ、カイコ。それ。」
日本において"それ"は、あまりに過ぎた力だ。
だがいまの私は、無感情な"それ"と同化したい気分なのだ。
「いや、お前には……」
「いいから。……早く。」
彼は渋ったが、私は"それ"を。半ば強奪する。
……ああ、思っていたよりも冷たいな。それに重たい。
鈍い黒は"彼ら"の行き先を暗示するかのようだ。
お、弾倉を抜けば意外に軽くなるものだな。
引き金は……ああそうだ、撃つ時以外は掛けちゃダメなんだっけ?
「――おい、おい!
真面目に聞いてるのか!」
「……うん。大丈夫。
あとはぶっつけでなんとかするから。」
弾倉には十二発。
撃ったことなんてないし多めに貰っておこうかな。
「千紗、ちゃ……」
≪彼女は手に持った"それ"を"理解"しようとしている。
人間ではない無機質な鉄の塊。
無感情な"それ"に彼女は吸い込まれてゆく。
……私を守ってくれようとするのは嬉しい。
でも、それは……
ああ、私が、私が彼女の"バックアップ"にならなくては……≫
「リズちゃん。大丈夫、大丈夫だからね。
私は絶対に、貴女の側を離れない。」
≪彼女の人格が消えてしまう。≫
「着くぞ、端へ!」
カイコ、私たちのことを気遣ってくれるんだ。
でもね「扉が開いたら撃つ」、「それを見越して隠れる」。
……なんて当たり前すぎると思わない?
「おいチェシャ!下がっ……」
「チェシャ!」
まず間違いなく牽制してくる。でもそれは胴体を狙ってだ。
……ちょうどいいや。ぶっつけで立って撃つなんてキツいだろうし。
なるべく中心を避けて、できるだけ体勢は低くとって……
鉄の箱が動きを止めると、私の内臓は背中へぶつかる。
ゆっくりと扉が開き――ああ、やっぱいるじゃん。
地面に肘を付いたまま「目」「照準器」「対象」の皆既月食を作る。
どのくらい衝撃が来るのか、楽しみではある。
引き金は重たいのかな?火薬の臭いってやっぱり花火と同じ?
ああ、ダメだ。そんな風に考えてしま……
「チェシャ、お前……」
いや、やっぱり、そんなことどうでもいいか。
≪もう扉が開いてしまうというのに、チェシャは何故か腹這いになった。
なに?いったい何を考えているの?私たちは隠れてカイコに……
……ああ、そうか。そういうこと。相手が何を考えているか、わかってしまうのね。≫
「やっぱ凄いね、リコイル。肩痛いもん。行こ?二人とも。」
≪十一発の弾丸を二名に撃ち込み、彼女は微笑む。
瞳は拳銃の持つ"黒"と同じ色をしていた。
私は、私が持つ「町林千紗の人格」に、その"狂気"を上書きしたくなかった。≫
何卒、よろしくお願い申し上げます。




