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-Chapter15-

松岡千秋です。

よろしくお願い致します。

-Chapter15-


喫茶「Carroll」はいつもと変わらぬ風景だ。

しかし、空気感というのは必ずしも同じではない。


私が知る限り、いままでこの店で味わったことのない……


――史上最悪の沈黙を迎えていた。


「ねえ、カイコ。悪い冗談ってわけじゃ、ないんだよね?」


キャップは連絡を受けてすぐに飛んできた。

声は普段と変わらずに、気怠さと艶を持っていた。

だが、その目つきはみたことのないほどに凶暴だった。


問い掛けには誰も答えない。

事の顛末を知っているのはカイコだけだ。

こちらから聞くのは憚られる。早いとこ口を開いてくれ……


「……ああ。」


「シロさんさ、結局どこにいたわけ?」


キャップもシロさんと呼ぶのか。

いや、いまはそれどころじゃない。

彼はカイコを責めているつもりはないのだろうが、口調には棘を感じてしまう。


「白ウサギは、ネイピアの居場所を掴んでいたらしい。」


「はあ?何それ、カイコはそれは知ってたの?」


「ああ……」


「あのさ……はあ……俺らってチームだよね?

 リーダーや年長者のシロさんが、

 それをないがしろにするのって、良くないんじゃない?」


「……すまない。」


私は押し黙ることしかできない。

誰が悪い、ではないのだ。それはみんな解っている。

しかし言葉をぶつけるしか、発散の方法を見出せないのだ。


「……もういいよ。で、シロさんは敵の懐でなにを?」


「白ウサギは網を張る、といっていた。」


「んー……ぶり返すようだけど、どうして僕には伝えなかったの?

 それに情報を集めるんだったらカイコも一緒の方がよかったんじゃ?」


「もちろん、俺もそう考えた。

 だが白ウサギは来るな、と言っていた。

 ……それに俺が知ったのもとっくに網を張った後だった。」


「シロさんが、ねー……うん、わかった。

 あの人がそういってたんだね?じゃあ、そういうことだ。

 ……カイコ、責めて悪かった。」


「ああ、すまなかった。」


この二人はよほど白ウサギを信頼しているのだろう。

……かくいう私もだ。彼ほどの人間が判断を誤るとは思えない。

「来るな」と言ったのも、「網を張った」のも、

その言動にはなにか、意味のあったのだろう。


「網には何か掛かってたの?」


「死亡報告を受ける直前、白ウサギは連絡を寄越した。

 ……ただ、普段からは想像出来ないほどに切羽詰まった様子だった。」


白ウサギが取り乱すほどの収穫。

……いったい、なんだというのだろう。


「……奴らの、真の目的だ。」


「シン?ちょちょ、待って、待って!

 それはシステムをダウンさせる事じゃ……」


「気が付くべきだった。

 奴が日本に入り込んでる、それを聞いた時点で想定すべきだった。」


"奴"とはアルフレッド・ネイピアのことだろう。


「奴らは……ドッグタグを爆破するつもりだ……!」


んん……?爆破?爆破っていったか……?

ドッグタグを爆破?意味がわからない……


「……なるほどね。つながった。」


キャップは理解しているようだ。

……どうやらリズちゃんも。


「俺たちは秋星、ローゼスから情報を得た。

 不可解なワードに気付いたか?」


「え、と……DDos攻撃……?」


わからない私に説明をしてくれるようだ。

親切心は素直に受け取るが、大学の講義でもなし、早く教えてくれ。


「それもあるけど"情報通信量"って二人とも言ってたよね?」


「ああ、そういえば!……でもそれがなにを……」


「奴らは"情報通信量"の上限値を知りたがった。

 つまり、どのラインまでドッグタグという"ハード"は耐えられるか、ということだ。」


……なるほど。読めてきた。


「ローゼスは負荷を与える実験をしたと言っていた。

 ……千紗ちゃん、バッテリーやスマートフォンの爆発とか、みたことある?」


ドッグタグ=マイクロチップ。

当然、個人識別や資産管理はデータの送受信で行われる。

データのやり取りを過剰に行えば、タグは熱を持つ。

やがて過負荷には耐えきれずに……


「いや、待ってください。発火こそすれど爆発は……」


「……するんだよ。」


「え……?」


「奴らは外注まで使って入念にチェックした。

 ……二週間くらい前の不審死事件、知ってるか?」


あっ……


『被害者は連続通り魔事件の容疑者。

 なんと身体の一部が千切れ飛んでいたらしい。

 ……昔みた映画のように、大型ライフルで狙撃でもされたのだろうか?』


「アレ以外にも、奴らは"実験"してるだろうな。」


「そう、だから確信を持って言える。

 ……"情報の多さ"が人を殺すことを、奴らは知っている。」


なるほど、理屈はわかった。

しかしドッグタグは自らの任意の場所へ装着できる。

それによっては身体の一部が欠損するだけで、死を免れる人間もいるのでは?


「……おそらく、死人はオマケだね。」


「ああ。ドッグタグはあくまで小型のチップ。

 殺しきれない人間も少なくない。本当の目的は……」


「八岐大蛇の頭を、全て切り落とす気か……」


頭……つまり日本の指導者や政治家のことか?


「……タグによる、管理政策は、政治家や官僚が、率先して、おこなった。

 若い、ロット番号の……ほぼすべては、力を持ったひとたちに、割り当てられてる……」


リズちゃんが補足を入れてくれるが、話がイマイチみえてこない。

若いロット番号、ということは彼らをピンポイントで狙える……?


「いくら、大規模な、DDos攻撃、でも。

 ドッグタグは、ハードもシステムも、セキュリティは、堅い……

 だから過負荷は、一律には、できない……

 どうしても、時間差が生まれる……つまり……」


「難しい計算なんてしなくても、上から順にやれば、

 日本の重要人物から爆発お陀仏だねー……」


ここまできいてようやっと理解した。


奴らの真の目的は、ドッグタグの爆破。

若いロット番号を管理するサーバーから順に、DDos攻撃による過負荷を与える。

……その若い順というのは、国にとって重要な年寄り順、ということか。


「老い先の短い年寄りだ。

 ただでさえ身体の一部が吹き飛べば、まともな判断なんてできなくなる。

 仮に、異常な精神力を持ってたって、身体の方が持たずにご臨終だ。」


「重要な、政治家、ね……」


「ああ、最悪だ。」


私にもわかる。これは日本、いや世界史上最悪のテロだ。


「日本の首都が、壊滅する……」

何卒、よろしくお願い申し上げます。

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