-Prologue-
松岡千秋です。
よろしくお願いします。
-Prologue-
終末時計は巻き戻された。
人口の増加、資源の枯渇、今となっては理由なんてどうでもいい。
ともかく、考え得る中で、一番最悪の形で人類は生きながらえた。
第三次世界大戦。
中心となったのはロシア、中国、アメリカ。
人類史上、最も長く感じたであろう三年間。
唯一の勝利国はアメリカだった。
アメリカは多大な犠牲を払いながらも、両国を退ける。
決め手は「核兵器」だった。
勝利国が得たもの、敗戦国が失ったもの。
どちらにせよ、人類は新たな十字架を背負うこととなった。
アメリカは「核」の過ちを繰り返した事から、世界中から批難を受ける。
世界の中心とまで謳われた超大国は落日を迎えた。
偉大なリーダーを失った先進諸国は「世界は一つであるべき」だと改めて認識する。
「マイクロチップ」による個人識別、政府による資産管理。
個々人を飼い慣らし、戦争の無い一つの国を作ろうと国際条約を締結。
「流通貨幣」という概念を廃し、共通の価値基準を作り上げようとした。
しかし金銭や物価の平均化に各国は難色を示した。
"経済成長の停滞"は"国力の低下"を招く。これは憂慮すべき事態なのだ。
やがて、仰々しく掲げた世界平和は形骸化。
経済冷戦という灰色の時代を迎える。
大戦後、ロシア、中国は崩壊。
アジアは混迷を極め、ヨーロッパ諸国は世界から「引きこもる」ことを選ぶ。
当のアメリカ大陸は内乱を抑えながらも主要都市は戦前と変わりなかった。
そして、日本。
アメリカが"首輪"を緩めたとはいえ、飼い犬に変わりはなかった。
ご主人の"言いつけ"として、神奈川県はアメリカとの共同自治区となる。
手を取り合う。という名目だが、日本に好き勝手を許さない、新たな"首輪"としてである。
もう一つの大きな変化は北海道。
ロシア人、韓国人、中国人の侵入により、もはや日本とは呼べなかった。
大戦では自衛隊を派遣するも、ほとんどが蚊帳の外だった。
軍隊ではない彼らは「戦争」をしなかった。
否、出来なかった。
大罪人の共犯とはいかなかったのだ。
過去から培った平和ボケ、日和見は奇しくも生存手段として有効に働いたらしい。
日本という島国にも「世界平和」の波は押し寄せる。
マイクロチップによる個人管理に異を唱える者はいた。
しかし言葉だけの民族だ。
然したる「騒ぎ」も無く、完遂されるに至った。
日本は事実上の中立国となった。
安全地帯であり、次代の超大国への足掛かりともなり得る、重要なファクター。
傷を癒すために。栄光を取り戻すために。
見えない何かを探し求め、世界は動いていく。
何卒、よろしくお願い申し上げます。