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あの頃はそれが全てだった  作者: 熊谷充白
9/10

先手

「連絡手段は全部断つから」

別れを切り出す彼にそう告げたのは私だった。別に後悔はしていない。実際、別れた後に連絡をとるカップルの心情が私にはよくわからなかったし。でも別れ際私が彼に伝えたのは、それだけが理由ではなかった。私は彼に、

「私との繋がりはもうなくなるんだよ、それでもいいの?」

と、念を押したかったのだ。ただそれだけの理由だった。彼は、嫌だけど仕方ないよねと言っていた。なんだそれ、仕方あってよ。なんてことも言えず、それなら別れようと言った。頻度は低くても毎日していたLINEも、たまにする寝落ちの電話も、更新されるとちょっとドキッとするストーリーも、あの日からパタリとなくなって、ぽっかり穴が空いた感じがする。共通の友達のストーリーに彼が写っているのを見て、ああ楽しそうだな、よかったな。なんて思いながら寝返りを打って、あまり広くないベッドに二人で寝たりしたことを思い出した。あんなにも近くにいたのに、誰よりも近くにいたのに。今は誰よりも遠くにいる。でも、そうじゃなきゃいけないんだ。そうじゃなきゃ酔ったことを言い訳にして電話をしてしまうんだろうし。簡単に元に戻りたくなってしまうだろうし。近くにいたら辛くなって嫌になっちゃうんだろうし。だって二人で過ごした思い出や時間はなかったことになんてできないんだから。だからきっとこれが正解なんだよ。正解なんだろうけど、こんなことならさ、恋人になんてならなきゃよかったんだ。って、本気で思うくらいには、私まだ好きだよ。

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