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あの頃はそれが全てだった  作者: 熊谷充白
6/10

右耳に触れる

「わかってないのはそっちだよ」

彼女はなぜか瞳を潤つかせながら声を振り絞っていた。なんでそっちが泣きそうなんだよ。泣きたいのはこっちだよ。 彼女が何を考えているのか、わからない。全然わからないのに、次にどんな言葉を投げかけられるのかがわかる。逃げたい。この場から逃げ出したい。案の定、彼女の口から別れようと言う言葉が僕の耳に届く。さっきまで泣きそうになっていたくせに、なんでその言葉だけはしっかり口にするんだよ。もっと、躊躇ってくれよ。 どうして、いつ、どこで僕は間違えてしまったんだろう。こんなにも好きなのに、と伝えると彼女は少し微笑んでいる。ほらね、と言われているようなそんな気がした。彼女にはわかる何かが僕の中にあるのだろうか。それならどうしてそれを教えてくれないのだろう。何も返せない僕に彼女は続ける。

「ずっと別れたいって思ってた。価値観も合わないし、飽きちゃった」

彼女は申し訳なさそうな顔をしつつ半笑いしている。それが彼女の本心だとしたなら僕は酷く傷ついただろう。でもそうじゃないことはすぐにわかった。僕がどれほど彼女を見てきたのか、彼女こそわかっていないじゃないか。彼女が嘘をつく時の癖くらいすぐにわかる。そして、彼女が嘘をつく時は優しさからで、相手を思ってのことだということも。

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