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あの頃はそれが全てだった  作者: 熊谷充白
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夢中

夢中

「眠れないや」

そう言ってかけてくる電話を僕はいつからか待つようになっていた。眠くても、くるかもわからない彼女からの電話のために起きる日もある。友達以上恋人未満。僕と彼女はその言葉の通りの関係だ。だけど彼女に「男女の友情って成立するんだね」と言われた時、僕は後ろめたくなった。だって多分、僕は彼女のことが好きだから。それは抱きしめたいとかキスしたいとかそういう好きで、紛れもなく恋だと確信してしまっていた。でも、彼女が僕と友達でありたいと思うのなら僕は彼女の望みを叶えたいと思った。第一、今の関係を崩せるほど僕は強くはない。だったらこのままでいい。彼女の隣にいられるのならなんだっていい。なんて僕は油断していた。

「恋人ができたの」

だからもう、今までのように二人で遊んだりはできないんだ。ごめんね、と。電話越しの彼女は少し申し訳なさそうに、そのくせいつもより明るい声で言った。そっかおめでとう、と心にもない言葉を吐き捨てる。僕は僕さえ気持ちを漏らさなければ、隣にいられるとそう信じていた。馬鹿だった。彼女に恋人ができてしまえば、彼女の隣は恋人のものだ。どうして、そんな簡単なことに僕は気づけなかったのだろう。彼女の隣にいるために友達でいることを選んだのに、隣にすら居られなくなるだなんて。こんなことならあの夜電話でもなんでも好きだと伝えればよかった。なんて、今更馬鹿らしい。僕が彼女さえいればいいと思っているのと同じように、彼女も僕さえいればそれでいいと思ってくれていると思い上がっていた。なんだよ、なんなんだよ、これ。夢なら早く覚めてくれと誰もいない部屋、ほっぺをつねって呟く。

「痛い」

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