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あの頃はそれが全てだった  作者: 熊谷充白
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独りよがり

「素直じゃないな」

そう言って笑う彼が好きだった。彼の好きだよって言葉に、私は頷いてありがとうと返す。それが精一杯だった。どうしようもなく好きなのに。きっと彼がわたしを想う以上に想っているのに。どうしてか、言葉で伝えることができない。高いプライドのせいなのかもしれない。恥ずかしいからなのかもしれない。 言葉じゃ返せないから、何にもない日に彼の好物を作ったり、抱きしめてくれる彼より力を込めて抱きしめたり、好きなアイスを内緒で買っておいたり、どうにか彼に伝わるようにした。そんな私だから愛想尽かされるのが怖くて、素直になれなくてごめんね、と伝えると「わかってるから大丈夫だよ」と答えてくれた。言わなくたってわかってくれる。そんな彼に私は甘えていたのだと思う。

「ごめん、俺もうわかんない」

そう別れを告げられた。私はずっと彼をわかっているつもりだった。彼が私をわかってくれているように、きっと私も彼のことをわかってあげられていると思い込んでいた。何一つわかっていなかった。彼はずっとずっと不安だったのかもしれない。大丈夫って言ってくれたのは自分に言い聞かせていたのかもしれない。そんなことに今更気づいた。そうなってからやっと言えなかった言葉がこぼれる。

「私は好きだよ。すごくすごく好きだよ」

彼は頷いて、ありがとうと言った。もう、遅い。好きって言葉に好きって言葉が返ってこないのはこんなにも悲しいのだと、今知ったって仕方ないじゃない。

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