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あの頃はそれが全てだった  作者: 熊谷充白
10/10

本性

「夜になるとさ、無性に口笛を吹きたくなるよね」

反応の悪い僕に当時付き合っていた彼女は続ける。だってほら、子供の時に言われたでしょ?夜に口笛を吹いちゃダメだって、と。彼女は、校則に縛られるのが嫌いだった。いや、嫌いだったというよりは破ることが好きだったのかもしれない。スカートを切ったり、ピアスを開けたり、髪の毛を染めたり、屋上に行ったり。側から見ればイキリに見えるかもしれないけど、そうじゃなかったように思う。僕がどうしてそうもわかりやすく校則を破るのか聞くと彼女は言った。

「私は自由でいたい。でも、自由は拘束があるから存在してる。だから自由でいたいっていうよりも自由を感じていたいのほうが正しいか。それにダメって言われたらしたくなっちゃうもんじゃない?」

そんな風に話す彼女は煙草もお酒も手を出していないから不思議だった。僕にとって彼女の何もかもが魅力的に見えて、当時はとにかく追いかけることに必死だったのをよく覚えてる。こうして今、彼女のことを思い出すのは多分、僕が人としてしてはいけないことをしてしまっているからなのかもしれない。ラインの通知が鳴る。恋人からだった。

『次会える時また連絡する。それまでは連絡してこないでね』

僕は既読だけつけて恋人とのトーク欄をスライドし、削除の文字を押す。これは恋人に言われていることだった。 僕は浮気相手だ。この関係を続けてもうすぐ1年になる。2番でも何でもいいと言ったのは僕で、それを許してくれた。当たり前だけど相手にバレることは絶対に避けなくてはいけない。だから、要求してくることに僕は全て応える。それだけで一緒にいられるのならお安い御用だ。でもやっぱり、連絡をするなと言われればしたくなってしまうし、人の目のある場所で手を繋いではいけないと言われれば繋ぎたくなるし、跡をつけるなと言われればつけまくりたくなる。今まで付き合ってきた恋人にそこまで何か「したい」なんて思ったことはなかったのに、何故だかたまに堪えられそうにない時がある。そんな時に思い出すのが高校の時付き合っていた彼女の言葉だった。僕は思うのだ。僕のことを必死に隠して、誰にも言えない二人だけの内緒をたくさん作って、それでもなお僕を求めてくれる瞬間が彼女の中にあるということがたまらなく愛しいのだと。でもそれは拘束を破ることで自由を感じていられることと同じように、きっと浮気相手としてでないと感じられないことで。だから僕は多分、彼氏がいる彼女が好きなのだと、思う。

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