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思い出して、ほむほむ

 僕を解放してくれたのは僕の幼馴染だった。


「ねえ、私のこと覚えてる?」


 彼女と初めて会った時、彼女は僕にそう言った。当時、僕は三歳で外より家で遊ぶことの方が多かった。だから、あまり人と会う機会はなかった。そのため、初対面の人にそんなことを言われる可能性はほぼゼロに近い。けれど、彼女は僕に「おはよう」でも「はじめまして」でもなく「私のこと覚えてる?」と言った。


「ごめん。どこかで会ったことあったかな?」


 僕がそう言うと彼女は僕を抱きしめた。


「あるよ。でも、なぜかあなたはそれを覚えていない。ねえ、どうして私のこと忘れちゃったの?」


 僕が彼女と話している時、僕の母親はその子の母親と一緒に僕たちの微笑ましい姿を記録するために写真を撮りまくっていた。


「そんなこと言われても困るよ。それより早く離れて」


「やだ」


「どうして?」


「やっとあなたと会えたから」


「ええ……」


 その日、彼女は日が暮れるまで僕を抱きしめていた。僕が彼女にバイバイと手を振ると彼女の目が一瞬光った。その直後、僕の頭の中に見知らぬ景色が飛び込んできた。見たこともないいろんな景色が僕の頭の中で楽しそうに踊っている。一時停止やスキップボタンなどはないため、それが終わるのを待つ以外僕にできることはない。いろんな景色があったが、その中で一番印象に残ったのは『炎』だった。今のはいったい何だったのだろう。僕が目をパチクリさせていると彼女は僕に「またね」と言った。僕が彼女に「うん、またね」と言うと彼女の口角が少しだけ上がったような気がした。

 その日の夜、僕は喉元まで出かかっているのに思い出せない病にかかってしまった。母にそのことを伝えると「うーん、それは多分、舌先現象だね。まあ、そのうち思い出すわよ」と言われた。僕がその時求めていたのはその病の治し方だったのだが、どうやら母にとってそれは『くしゃみ』や『しゃっくり』程度のものだったようだ。


 *


 それから時は流れ、高校の入学式。この日、僕はある事件に巻き込まれた。


「あれ? あいつ、どこ行ったんだ?」


 もうすぐ入学式が始まる時間だというのに僕の幼馴染の姿がどこにもない。まったく、こんな大事な日なのにあいつは何をしているんだ? 僕は廊下に並んでいる新入生の一人にトイレに行くと伝えてから幼馴染探しを始めた。


「うーん、とりあえず屋上に行ってみるか」


 あいつは昔から屋根の上や屋上が大好きだからなー、今もきっと屋上にいるのだろう。僕の予想は一応当たった。しかし、彼女がいる位置までは予想できなかった。


「お、おい、そこ危ないぞ」


 彼女は屋上にある網の外側にいる。


「ねえ、私のこと覚えてる?」


 あの日から彼女は毎日僕の家にやってきて同じことを言うようになった。答えが変わるはずないのに。


「いやいや、今そんなのどうでもいいだろ」


「よくない。いいから答えて」


「覚えてないよ。それより早くこっちに来い」


「どうして……どうして思い出してくれないの?」


「思い出す? 何をだ?」


「あなたは炎で私は氷」


「はぁ?」


「あなたは希望で私は絶望」


「お前さっきから何言って」


「はぁ……これだけ言ってもダメか。でも、諦めたくないな。よし、決めた。私今からここから飛び降りる」


「はぁ!? お前それ本気か!!」


「うん、本気だよ」


「ま、待て! 今そっちに行くから!!」


「分かった」


 待つのかよ。まあ、待ってくれないと困るけど。


「ふぅ……やっと着いた。まあ、その、なんだ。冗談でも言っていいことと悪いことが」


「今までありがとう。さようなら」


「なっ!」


 幼稚園の頃から彼女は誰よりもおとなしかった。あと何を考えているのか分からない不思議な子だった。それから小、中、高と一緒の学校。


「よかった。来てくれた」


「何ほっとしてるんだよ! もうすぐ二人とも死ぬんだぞ!!」


「大丈夫。死なないよ。だから……思い出して、ほむほむ」


「……!!」


 あー、そうか。こいつはどこもおかしくない。おかしいのはこの世界だ!!


「すまない。ゆき。お前のおかげでやっと全部思い出せた」


「ほむほむ!」


まとうは赤! 破壊の炎!!」


 破壊の炎を身にまとった僕……いや、俺はゆきと共に雲の上まで上昇した。


「よう、久しぶりだな。幻帝」


「な、なぜだ! 俺様の幻覚を自力で見破るのは不可能だ!!」


「たしかに自力では無理だな。だが、ゆき……氷帝のおかげで全て思い出せた」


「く、くそー! こうなったらもう一度あのお方の力を!」


「させるか! くらえ! 火炎地獄!!」


「ぐ、ぐわぁあああああああああああああああああああ!!」


「やったね。ほむほむ」


「ああ」


「見て。世界が元に戻っていくよ」


「ああ、そうだな」


 この町の風景、昔アスランドの古い書物で見たことがある。たしかアスランドと交流があった国の一つだ。名前はジパング。別次元にある黄金の国。で、俺たちが今まで見ていたのはその国のとある町の再現ってわけだ。


「行こう、ほむほむ。もうここには用はないよ」


「なあ、ゆき。いい加減、その名前で呼ぶのやめてくれないか?」


「どうして?」


「いや、その、なんというか……そう呼ばれるとこそばゆいんだよ」


「そうなんだ。じゃあ、ほむぽん」


「はぁ……もういいよ、ほむほむで」


「いいの? やったー」


「よし、じゃあ、とりあえずアジトに行くか」


「うん!!」

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