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第63話 なんでプールは男女別なんや!?

 姫宮との一件があった日から一週間が経った。あの日以来、姫宮は登校はしているが、完全に孤立している状態になっていた。


 まああれだけ悪評が広まってしまったんだからな……動いても虐げられるだけだろうし、大人しくしているのは、ある意味正解なのかもしれない。


 花園もあれ以来姿を見せないし、日和への嫌がらせも無い。黒鉄からの報復も無い。ようやく平和な日常を過ごせるようになったのかもな……。


「あ~お腹すいた。あたしの~♪ 今日のごはんはコロッケパン~♪」


 上機嫌でよくわからない歌を歌う出雲さんは、ビニール袋か掌より大きいサイズのコロッケパンにかぶりつく。


 七月になり、ようやく梅雨も終わって晴れの日が増えたけど、さすがに暑くて外で食べるのはしんどくなってきた。だから、今日は屋上に続く階段の踊り場で食べる事にした。


「私もお腹ペコペコ」

「体育の後って腹減るよな……女子は今日なにしたんだ?」

「プール」


 日和は俺の問いに答えながら、俺お手製のミニハンバーグを口にすると、美味しそうに口元を緩めていた。


 男子は蒸し暑い体育館でバスケをしている間、女子はプールか……ちょっと羨ましいな。バスケは嫌いじゃないけど、体育館が暑くて暑くて……。


「ワイな……ここ最近思うんよ。聞いてくれるか?」

「どうしたの? 私で良かったら聞く」


 何やら神妙な顔つきなうえ、腕まで組みながらゆっくりと語りだす猿石君。


 大体こういう時の猿石君って、しょうもない事を言うのがいつものパターンだからな……適当に聞き流しておくとしよう。


「なんでこの学校ってプールは男女別なんや!?」

「……当然だろ」

「おかしいやろ! せっかく泳ぎながら女子のスク水を見るために、潜水背泳ぎをマスターしたのに! 無駄になったやないか!」


 そんな血の涙を流しながら力説されても困るんだが……ていうか、その情熱をもっと違う所に活かして欲しい。特に勉強とか……実はこの前の中間試験、猿石君は散々な結果だったりする。


 猿石君から女の子好きを取ったら、何が残るんだって話になっちゃうけどさ……。


「女子のスク水……考えただけでご飯三合はいけそうや!」

「普通茶碗一杯のおかずにもならんだろ」

「なにクールぶってるねん! 桐生君だって神宮寺さんのスク水みたいやろ! この見事に実ったおっぱいに押し上げられたスク水——ふべらっ!!」

「おっとすまない、何か言ったかな??」


 俺は気づいたら猿石君の腹部に、最近少しずつ鍛えられてきている拳をめり込ませる。


 全く、日和をそんな性的な目で見るなんて絶対に許さないぞ……日和を……日和のスク水……うん、普通に見たい。


「う~ん、桐生君もあたしに似て間猿に容赦がなくなってきたね! 素晴らしい!」

「なんかこの流れが様式美になってるし、つい……」

「気にしないでどんどんやっていいよ! って……なんで口元緩んでるの? ひょっとして……日和ちゃんのスク水を想像しちゃった?」

「え!? そそそ、そんな事無いぞ!」

「嘘つくの下手過ぎ~」

「ヒデくん……私のスク水、見たいの?」


 メチャクチャ見たいけど、流石にみんながいる前でそんな事を言ったら猿石君と同じになってしまう。でも、見たくないって言ったら日和をガッカリさせてしまうかも……いや、恥ずかしがってしまうか?


 ああもう、どう答えるのが正解なんだ!?


「えっと……その……」

「……見たくないならいいの。私のなんて、見ても面白いものじゃないし……」


 マジかよ、見たいっていうのが正解だったか! 完全にやっちまった!


「めっちゃ見たい!」

「ホント?」

「ああ!」


 悲しそうな顔から一転して嬉しそうに笑う日和を見て、俺はホッと息を漏らした。


 こんな答えるのに難しい問いをしないで欲しいんだけどな……せめて家で二人きりの時にしてくれればまだマシだったのに。


「ちなみにスク水以外なら、どんなのをご希望ですか~?」

「そうだな……日和ならなんでも似合いそうだよな……個人的にはビキニが見たいけど……他の男連中に見せたくないから、まだワンピースタイプの方が露出が少ない上に可愛さも演出できて……はっ」


 出雲さんに聞かれてつい普通に答えてしまった。これじゃ猿石君と全く同じじゃないか! は、早く弁明しないと!


「あ、えっと……これはだな……」

「まあいいんじゃない? こんな超可愛い彼女がいるんだし、そりゃ男子ならそういう妄想の一つや二つはするもんでしょ。日和ちゃんにお願いしてみれば?」

「お、おう……」

「あれ、あたしの言葉が信じられない? 日和ちゃんを見てみなよ~」


 言われるがままに日和の事を見ると、日和は少し恥ずかしそうに、しかしとても嬉しそうに笑っていた。


「ヒデくん、私……どんな水着でも着てあげる。任せて」

「なんでも……」


 それならめっちゃ際どい水着とかも来てくれるとか……いやいや! だからこれじゃ変態だって! 表に出てくるな俺の煩悩!


「桐生君、鼻の下伸びてるよ」

「え、マジで!?」

「うっそで~す♪」

「…………」


 これは完全に出雲さんのおもちゃにされてますねハイ……ていうか、出雲さんの隣でまだ腹パンの痛みで蹲ってる猿石君の心配とかはしない……んだろうな。いつもの事だし。


「ちなみに日和ちゃんは桐生君にどんな水着を着て欲しい?」

「俺の水着なんて何でもいいだろ。そもそも男子の水着なんて女子に比べると種類が少ないし」

「う~ん……ヒデくんはカッコいいからなに着ても似合う。だからどんな水着でも見たい」


 うっ……そんな笑顔で真っ直ぐな気持ちをぶつけられたら……流石に恥ずかしいんだが……心臓がバカみたいに騒いでるし、顔もメチャクチャ熱くなってる。


「お~……互いに何でも似合うって言うなんて、まさに相性ピッタリって感じ!」

「相性は当然だろ。日和以上に相性が合う奴がいるなら見てみたいね」

「えへへ……」


 全く、出雲さんはなに当たり前の事を言っているんだろうか。そう思っていたら、日和は甘えるように俺の肩に頭を乗せてきた。


 みんながいる前でそんな事をしたら、またからかわれてしまいそうだが……日和が嬉しそうだし、まあいいか。


「ふー……ようやく治まったわ。桐生君、容赦なさすぎひんか!?」

「猿石君が変な事を言うからだろ」

「ワイは男のロマンをやな……はいすみませんでしたお二人共その拳を下げてください!」


 俺と出雲さんの振り上げた拳を見て、即座に超早口で、そして綺麗な土下座をして謝る猿石君に、俺は思わず苦笑いを浮かべてしまった。


 謝るくらいなら、最初から言わなければいいのに……。


「……ねえ綾香ちゃん、さっきからずっと静かだけど……調子悪いの?」

「…………」

「山吹さん?」

「……はっ!?」


 日和に声をかけられても、どこか上の空でおにぎりを食べていた山吹さんは、俺の呼びかけでようやく気付いたのか、肩をビクンっとさせながらこっちを向いた。


 そういえば、さっきから全く会話に入って来てなかったな……俺と日和の恋愛絡みの話なんて、山吹さんがいの一番に食いつきそうな話なのに。


「ごめんごめん! ちょっとボーっとしてて!」

「……そうなのか?」

「うん!」


 山吹さんはその場では明るく振舞っていたものの、一分もしないうちにまた同じ感じに戻っていた。


 これは絶対におかしい。何かいつもと違うことがあったに違いない。


「山吹さん、何かあったのか?」

「な、なにもないよ~? 急にどうしたの?」


 うわっ……俺が言うのもアレだけど、嘘つくの下手すぎだろ。視線泳ぎまくってるし、汗もダラダラだぞ。


「俺は山吹さんに沢山助けてもらってるんだ……だから俺も、困ってる事があるなら力になりたい」

「……うぅ……みんな、幻滅しない……?」


 涙目になりながら恐る恐る聞く山吹さんに、俺達は力強く頷いて見せると、「ありがとう」と言いながら、山吹さんは一枚の紙を取り出した。


 なんだろう……最近色々と起こったせいか、手紙を見ると嫌な予感しかしない。


「これは……」


 山吹さんが見せてくれた手紙には、機械で打ち込まれた字でこう書いてあった。


『神宮寺日和と縁を切れ。さもなければ、お前が過去に行った、万引きの事を周りにばらす』

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は日曜のお昼に投稿予定です。


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