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第31話 思惑通りの結末

「あのバカ、やってくれたわね」


 私は宿泊する部屋のベランダで夜風に当たりながら、深く溜息を吐いていた。


 溜息の原因はもちろん、あの大馬鹿男――黒鉄の事についてだ。どうやら黒鉄が勝手に彼女を連れて行き、それを見つけたヒーロー君に負けて、先生達に連れていかれたみたい。


 ヒーロー君の大切な人である彼女に深い傷を残せば、ヒーロー君が苦しむかなって思ったから、彼女が一人の時に連れ出せって、私が黒鉄に言ったのは間違いない。


 でも、わざわざその為に、キャンプファイヤー中に私が事前に準備したお友達に協力してもらって、ヒーロー君達をバラバラにして、その間に黒鉄に行動させるつもりだった。そうすれば、それなりの時間を稼げると思ったから。


 なのに、あの馬鹿は勝手に行動をして……その結果が、何かをする前にヒーロー君に見つかったという事実だ。


 ……なんで私が知っているかって? クラスの男子が、黒鉄と彼女を連れていくのを見ていたようで、気になって後をつけていったら、黒鉄が彼女に無理やり言い寄っているのを目撃したらしいわ。


 それで助けにも行かずに傍観していたら、ヒーロー君がやってきて……その後に仲間達も合流して、力を合わせて黒鉄を倒したって言ってたわ。


 なんとも趣味の悪い男ね。野次馬根性でついて行き、助けに行きもせずに眺めていて、起こった事を誰かに言いふらすって……何が楽しいのかしら。


 凄い情報を持ってきてみんなに教えたという優越感に浸れるとか? まあ正直、名前も覚えていないクラスメイトの事はどうでもいい。それに、そいつのおかげであの馬鹿のやらかしをすぐに知れたわけだし。


「それにしても……ヒーロー君がお姫様を助けに行って、ピンチに陥ったら仲間が助けに来て、力を合わせて悪を倒してハッピーエンド……か。まるで物語のようね」


 私はふふっ、と小さく笑いながら呟く。


 物語だったら、ヒーロー君がお姫様である彼女とくっついて、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし――そうなるんでしょうね。


 そんなの……冗談じゃないわ! ヒーロー君が幸せになるなんて絶対に許さない! 彼にはこれからも私の前で苦しみ続ける義務があるのよ!


 ……私とした事が、随分と興奮してしまったわ。少し落ち着きましょう。


 とりあえず、黒鉄が私に言われてやったって言う可能性は低いと思う。あいつは私の事を彼女と思い込んでるから、わざわざ嫌われるような事はしないって理由なんだけど……ホント気持ち悪いわね。


 万が一、先生達に言っても問題は無い。これでも学校では優等生を演じているし、日頃から先生へのポイント稼ぎは欠かしていない。


 こうしておけば、いつもいい子にしている私がそんな事を言う訳ないって思うでしょう?


 面倒この上ない事だけど、これも全てはヒーロー君を苦しめる為の苦労だからね。


 流石にクラスメイトには、黒鉄と一緒にいる所を見られているからか、ちょっと敬遠されてるけどね。どうでもいいけど。


 まあそういう訳で、現状私に火の粉が降りかかるのは無いとみて良いと思うわ。


「実質ノーリスクで黒鉄を排除出来たって思えば上出来ね」


 そう――今回、彼女に傷を残すのは、あくまでついでの話。真の目的は、黒鉄を学校から排除する事。


 中学の頃までは扱えていたとはいえ、最近はストレスで暴れたり、今回みたいに勝手な行動をする馬鹿は、はっきり言って邪魔なのよ。


 その為に、わざわざ彼女を使って黒鉄に悪い事をさせた。これがもし成功すれば彼女に深い傷を残したうえで、黒鉄を排除できる。失敗しても排除自体はできる。


 なんで排除できるのかって? つい最近暴力事件を起こして、すぐに女の子に酷いことをしようとしたのよ? どう考えても退学は免れないわ。


 まあ……普通だったら、こんな作戦が上手くいくと思えないけど、相手があの馬鹿で欲望に忠実な黒鉄が相手だからこそ出来た作戦と言っても過言ではない。


 さて、次はどうしようかしら……協力してくれるお友達は少しずつ増えてきているけど、まだ流石に人手不足感は否めない。


「何か、ヒーロー君を追い詰めるのに使えそうな、良い駒はいないかしら……」


 はぁ。昔みたいに、今にも死にそうなヒーロー君だったら楽だったんだけどね……たらればを言っても仕方ないわね。


 とりあえず、焦っても仕方がないし……こっちにチャンスが巡ってくるまでは大人しくしていましょう。


「鬼塚さん、消灯時間を過ぎてるのにまだ起きてるの?」

「ええ。ちょっと眠れなくて」

「明日も早いから、そろそろ寝た方がいいよ」

「わかったわ。ありがとう」


 同じ班員の女の子に笑顔を向けながら答えてから、私は再度景色を眺め始める。その姿を見て私を寝かすのを諦めたのか、後ろから窓が閉まる音が聞こえた。


「ふふっ……今だけは幸せを噛みしめていればいいわ。その分、絶望に叩き落とされた時が楽しみだわ……うふふふふ」


 彼女を傷つけたら、ヒーロー君はどんな顔をしてくれるかしら。怒るかしら? それとも悲しむかしら?


 今のヒーロー君なら、すごく怒るんじゃないかと思うんだけど、個人的には唖然とした顔を見たいのよね。なんで彼女も自分と同じように傷つかなければいけないんだ……みたいな感じにね。


 ああもう、色々と想像するだけでゾクゾクして……身体中が熱くなって喜んでいるのがわかる。このままじゃ寝れなさそうだし、もう少し夜風に当たりましょう。


 ああでも、ボーっとしてるとすぐにヒーロー君が苦しんでる妄想をして頭が冴えちゃうし、また身体が熱くなっちゃう。これじゃどのみち寝れないわ。


「我ながら贅沢な悩みね。でもやめられない……ああ、ヒーロー君……!」


最近生で苦しむヒーロー君を見ていないからか、妄想をするだけでもたまらない。


 待っててねヒーロー君……すぐに昔の様にどん底に引きずり降ろしてあげるからね……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は日曜日のお昼に投稿予定です。


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