23話
宿場町まであと少しと言うところで、ちょっとしたトラブルが発生した。
鉄板ネタとでも言うべく。盗賊が出たらしい。
あ、この馬車が狙われたんじゃなくて違う馬車が襲われていたんだけどね。
シュトライザさんが様子を見てくるからじっとしてろと言われてしまった。
「なあ、ライガ、こんなに馬車って襲われるのか?」
「荷物とか運んでる物は狙われやすいね。だから冒険者を雇うんだよ?」
「それはわかってるが、冒険者が居ても襲うのかよって思ってな!」
「それだけいい積み荷なんじゃないかな?」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ!」
すると、シュトライザさんが戻ってきた。盗賊はもう立ち去っていたようだった。人は全員殺られていたらしい。
しばらくここを離れられなくなったが、俺が全ての持っていけばいいんじゃないか!と提案すると、「それもそうだな!お願いできるか?」宿場町で、警備隊に引き渡すらしい。
荷を見ると空っぽになっていた。こんなに簡単に人は人を襲うんだな。と改めて異世界なんだなって思った瞬間だった。
取り敢えず荷馬車を回収して、冒険者と商人っぽい人をどうするのか聞いたら、この馬車で、引いていくと言われたので、白い布を被せておいた。
俺のものではないが、晒すには忍びないと思ったのでね。
とシュトライザさんに許可をもらった。
旅の初日から厳しい現実を見させられた1日だった。
やっと宿場町に着いて、シュトライザさんは警備隊に引き継ぎしてくると言い残して、宿に先に行っててくれと言われたので、向かうことにした。
「宿の名前なんだったっけ?」
「東風亭だったと思うよ?」
何でお前まで疑問系何だ!しっかり聞いとけよ!
「お前もな!」
ごもっとも!ちゃんと聞いてなかったんだからしょうがないだろ!過ぎたこと言っても始まらんだろ。
取り敢えず、探せばわかるだろ。
宿屋を探しながら宿場町を見て回るいい機会だと思えばいいんだ!
「誰に言い聞かしてるの?」
「気にするな!」
「ほら、あれじゃない?」
「おお、宿がとってあるか聞いてこよう。」
小走りで、向かった。あ、誰の名前で宿取ったんだ?シュトライザさんだよな多分。
「あのーシュトライザの名前で宿とってあると思うんだけども」
「はい、聞いております。では、お部屋は3部屋とってますがよろしかったですか?」
「はい、多分大丈夫です。」
おおーい、待たせたな!あっちょうどいいところに、シュトライザさんが帰ってきた。
「部屋3部屋でよかったのか?」
「ああ!お前とライガは、一緒の部屋な!」
「えっ?何で!」
「御者も泊まるからな俺も一人部屋だ。」一部屋だけ2人部屋でとっていたようだ。
「まぁいいけどさ」とライガが言っていた。
「今まで一緒にいたから問題はないよ。」
「盗賊の件は報告したけどまだ捕まってないからな。後に何かあるかもしれないから、出発の準備は早めにしといてくれ。」
「「はーい。」」
「じゃあゆっくり休んでくれ。」
シュトライザさんと別れて部屋に入り、今日は風呂に入るぞ!
「ライガ!風呂準備するからな!」
「ハイハイ。どうぞ。」
「何か諦めてないか?」
「悟ったって言ってもらいたい。」
「そうか?まぁいいが先に入るか?」
「うん。そうする。」
ウォーター、ファイアー、んーこれぐらいかな!いいぞー!
「はーい。エアーやって!」
「ハイよ!」エアー発動させてライガの顔に付ける
「どうぞ。」
ライガも大分これに慣れたな!もう慌てることがなくなった。ちょっとつまんない。何てこと考えてるとライガが気が付いてにらんでいた。
目線を反らして自分も入る準備しよー。
風呂を済ませると、部屋がノックされて、シュトライザさんがご飯に呼びに来てくれた。晩飯を楽しく済ませて、明日に備えて早く寝ることにした。
翌朝、早めに起きて、顔を洗っていると、ライガも起きたようだ。
早いな!年寄りみたいだぞってイラン一言を言ってきたので、顔を洗うんだろ。と洗面台を開けるとコールド発動させて冷たい水で顔を洗うはめになったライガが朝から叫び声をあげていたがスルーした。
「ちょっと!何てことするんだよ!」
「なんもしてないぞ?」
「子供かよ!」
聞こえないもーん!出発の準備済ませよう。黙々と準備をした。
部屋にシュトライザさんが来て、朝食は買っていくからもう出るぞ!と言ってきた。俺は全部準備で来てるぞー!
「俺も出来てるよ!」
「どうしたんだ?」
「「いや、何にもないよ?」」
ハモってしまったではないか!と、子供のやり取りを、楽しんでいた。
「出発するぞ?」「「ああ問題ないぞ!」」
「変なやつらだな!」
「あ、盗賊と出くわさないように、こんなに早く出るのか?」
「そうだぞ!めんどくさいからな!これ以上時間もかけられないからな。」
「馬車にシールド張っとくか?」
「目立つからやめとけ!」
「見えないように出来るぞ?」
「そんな問題じゃないよ!端から見たらおかしな馬車に見えるだろ?」
「まぁ、そうか?」
次の休憩所は明日の朝に着くから今日は一日中馬車だからな!
「えっ?宿場町まで、そんなにかかるのか?」
「そんなもんだろ?」
「えっ?そうなの?」
「うん!」
「結構過酷なんだな、旅って!」
「皆こんなもんだと思うよ?」
「まあ、普通の旅も経験しとけば、いつか役にはたつだろ?常識として。」
「そうだな。俺は本当に何にも知らないんだな。」
「これから、覚えるんだから、問題ないよ。」
「ありがとうな、ライガ!」
仲直り出来たようだな。とシュトライザさんが小さくつぶやいた。
馬車に乗りっぱなしは辛いなー。何かないかな!
とガイアはやはり斜め上をいっているようだった。
「なあ、ずっと馬車に乗ってなくてもよくないか?」
「「はっ?何いってる(の)」」
「えっ?転移で戻ってこれるよね?」
「「はっ?」」
「だって馬車に乗り込んでしまえば誰も見てないだろ?」
「いやいや、休憩はとるぞ?トイレだってどうすると思ってるんだ?御者だって休ませないと!」
「あ、そうだった。」
「もう、変なこと考えないで!」
「はい、すみません。」
ライガだけではなく、シュトライザさんまでため息をついていた。
「ちょっとでも旅が楽になるかなーって提案しただけだよ?」
「もう何も言わなくていいよ。」
「はい。」
途中で何度か休憩を挟みながら、馬車の中で一日過ごすという苦行に耐え、第二の宿場町に着いた。
「ここは通過だぞ?泊まらないぞ?」
「ええーーーーーーー!」
「次の宿場町で、宿泊するからな?」
「食事を取ったら出発だ!」
「はーい。」
「なあ、ライガこんなに旅って辛いもんなのか!」小声で聞いてみた。
「さあ、俺も馬車で、こんなに長い旅に出たことないんだよ。」
正直にお尻がかなり痛いずっと座っているからだ!
「シュトライザさん!」
「ん?どうしたんだ?」
「一生のお願いがあります。」
「お、おお、何だ改まって?」
「もう、正直に言いますけど。馬車の座り心地が悪すぎて、俺の尻が限界なんだ!」
「そうだな?」
「魔法を使わせてください。お願いします。」
「どんな魔法だ?」
「座り心地が悪いなら何かひけばいいと思って、エアー発動」
すると、空気の塊がちょうどサッカーボールぐらいになった辺りでまとめると、お尻の下にひいた。
「こんな感じで、外から見えないからこれだけでも、使わせてください。お願いします。」
「別にそれぐらいならいいぞ?何で泣きそうなんだ?」
「もう尻が痛すぎて、泣きそうなんだ!」
「そうか?まぁ馴れるまではそうだろうな。すまんな気が付かなくて。」
「使わせてくれるなら、問題ないよ。」ああー。すごく幸せ!
クッションって大事なんだなやっぱり!ちらっと隣を見るとライガも欲しそうに涙流しそうな顔してる。しょうがないなー。
ホレ!とライガにも作ってあげた。
「ガイアありがとう。」満面の笑顔が帰ってきた。今まで見てきた笑顔の中で一番の笑顔だな!
「そんなに座り心地が変わるのか?」
「もう、全然違いますよ。」
「俺にもいいか?」
「いいですよ!ほら!」エアー発動で、ボールを作って渡した。
「おおーこれはいいな!浮いてる感じだ。」
シュトライザさんも気に入ってくれたようだ。これならもうしばらくは我慢出来そうだ。




