表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔族長と元聖女の子育て世直し奮闘記  作者: デビル悪魔
1章 安住の地を
5/21

1.4 共命同体

 ソフィアはそっと横たわっているグレイの隣に座り込み、顔を覗き込んだ。グレイの髪はくすんだ銀のような色をしており、顔は雪のように透き通った白い肌をしていた。


「あなたが…私と同じ道を歩んだ魔族……」


 ソフィアはグレイの頬に手を添え、優しく撫でた

「なぜでしょうね…初対面のはずなのに、こんなにも貴方を愛おしく思うのは…」


 ソフィアの胸には先程までは絶望と悲哀に満ちていた。しかし、今はグレイのおかげで幸福で満ちている。自分と同じ信念を持ち、険しい道を走り抜け頂点へと至った魔族。ソフィアにとってはその存在を知れただけで十分に嬉しい事であった。


「私の道はここで終えます…でも、最後にあなたに会えてよかった。私の命によって貴方は助かり、そして聖魔共存の夢は途絶えることが無くなりますから…」


 ソフィアが一筋の涙を流し、グレイに微笑みかけた。


「ありがとう……後は任せます…」


 そう言った瞬間、ソフィアの手に冷たい感触が重なる。


「…意識があったのですね」


 その感触はグレイの手であった。


「お前が…元聖女か…?」

「…話を聞いていたのですね…」

「ああ、辛うじて聞いていた…フェンリルがすまない……優秀な奴なのだが頭に血が上ると、な」


 まさか最初に謝罪が来るとは思ってもおらず、ソフィアは可笑しくなりながら返す。


「気にしていませんよ…フェンリルさんは貴方を救おうと必死でしたから」


 そう言われたグレイがホッと息を吐く。ソフィアがフェンリルの粗相を気にしていないと聞き、安堵したグレイの様子にソフィアが改めて思う。


「本当に…あなたは聖魔共存を望んでいるのですね…」

「…信じていなかったのか?まぁ、仕方ないか…魔族にはあまりそういう者がおらぬからな…」


 ソフィアは慌てて誤解を解こうとしたが、グレイが話を続ける。


「しかし…同時期にまさか同じ信念を持った者が聖女にになっているとはな……知っていたらすぐに協定関係にこぎ着けていたぞ…」

「フフッ、そうですね。それができれば本当に話がはやかったんですが…」


 二人が笑いあう。しばらくしてから、ソフィアの顔を探るようにグレイが手を伸ばした。それをソフィアが優しく握り自分の頬に当てた。


「すまぬ……今は何も視えなくてな…せめてこの手で触れておきたかったのだ…」


 そう言ったグレイは光がなく濁った朱の瞳でソフィアを見つめた。その姿と瞳にソフィアは胸の奥が熱くなる。


「…あなたと生きている間にお話ができ、とても有意義でした。…どうか…私という聖族を忘れないでください」


 ソフィアの別れの言葉でグレイがピクリと手を止める。


「……”命渡し“とやらを使うのか…?」


「…はい……あなたが助かるにはそれしかありません…」


「他者を救うのに己の命を顧みないその精神…流石、元聖女なだけはあるな。しかし、一つだけ考慮していない…選択肢があるぞ…」


 グレイの言ったことにソフィアは首を傾げる。


「我とお前が両者共に生還するという選択だ」

「……そんな事、可能なのですか?」


 そんな都合のいい話、あるはずないとソフィアは思った。しかし、グレイの真剣な声色と表情からひしひしと事実なのだと伝わった。


「…いったい、どういった方法なのですか……?」


「それは我とお前が”共命同体“となるのだ」


「”共命同体“?」


「我が一族には共に生きると決めた者と1人だけ、契約を結べる儀式がある。その儀式を結んだ者同士は命を供給し合い、力の貸し借りが出来るようになる。それが”共命同体“だ。」


「成る程…つまり、その契約をあなたと私で結び、私が”命渡し“で死ぬ前に、貴方が生命力と聖力を送って助けてくれるという事ですね。」


 グレイの狙いをすぐに理解し、簡潔にソフィアがまとめ上げた。


「あぁ、そうだ…しかしこれは賭けになる。」


「賭け…ですか?」


 グレイの言葉にソフィアが不安そうに聞き返す。


「まず、この儀式が魔族と聖族で行えるかが不明だ…それに、成功したとしてもお前に聖力の供給が出来るかが確かではない。我は魔力を送ることは出来るが、持ち合わせていない聖力を送ることが出来ぬ…魔力がお前の身体に馴染まなかった場合、お前の死は逃れられない……そして最悪の場合なのだが。死んでしまったお前と共命し、我も死んでしまうかもしれぬ。」


 最悪の場合の内容を聞いたソフィアは即座に反発する。


「そんな分の悪い賭け…出来る訳…!!」


 出来る訳ない。そう言おうとした時、自分の腕をグレイが強く握ってきた。


「…お前が我を命を懸けて救おうとしてくれている事、本当に感謝している。しかし、それと同じく我もお前を命を懸けて救いたいのだ…」


 腕をつかんだグレイの手が少し震えている。ソフィアは言葉が見つからなくなる。


「頼む…やっと出会えた聖族の同志を…失いたくないのだ……」


 グレイは縋るようにソフィアに頼み込んだ。ソフィアはほんの一瞬、考えるように静かに俯き、そして口を開く。


「……分かりました。その賭け、乗りましょう。しかし、二人共死んでしまったら、あの世で文句を言いますからね。」


 ソフィアが糸目と眉毛を吊り上げてグレイに言った。その気迫にグレイは目が見えないがたじろぐ。


「わ、わかった。善処する…」


 グレイの慌てた様子と返答にソフィアは表情を変えて微笑む。


「ふふ…冗談ですよ。……それではその”共命同体“というのを行いましょうか。」


 ソフィアが儀式を始めようとする。すると、グレイの態度が変わる。


「うむ…そうだな……」


「…どうしたのですか?」


 ソフィアがグレイの急変に思わず訪ねてしまう。


「い、いや…そうだな……ソフィア、儀式の前に一つ尋ねていいか?」


「なんですか?グレイさん…」


 名前を呼んでくれたことにソフィアは内心、嬉しく思いつつ表情には出さず名前を呼び返す。


「…我の…」

「…?」

「…我の妻となってくれるか?」

「…………えっ?」


 場にそぐわない、思わぬプロポーズにソフィアの時間が止まった。

二人共なかなかしぶといので瀕死でもかなり持ちます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ