プロローグ
異世界”ケイオスワールド“
この世界には様々な種族が生息していて、大きく分けて二つの勢力が存在する。
~聖族~
"聖力“を身体に宿した種族。エルフ族、ドワーフ族などが該当する。
~魔族~
”魔力“を身体に宿した種族。ダークエルフ族、ダークドワーフ族などが該当する。
二つの勢力はこの世界の東と西に分かれ、東側が魔界、西側が聖界と定められた。
しかし、遥か昔に魔族と聖族の間に摩擦が起きた。それは魔族が領土を広げるために聖族の国に侵攻したか、または聖族が魔族を世界の汚れと称し迫害したか、様々な理由が挙げられている。
これにより魔族と聖族の間に深い溝が生まれしまい、互いに敵対視する者が増え、魔族と聖族による”第一次聖魔戦争“が起きてしまう。
"聖魔戦争"はある時代に、誕生した神の紋章を身体に宿した”勇者“と邪神の角を生やした”魔王“を筆頭に聖族、魔族達が行う大規模な戦争である。
勇者と魔王は絶大な力を持って同時期に生まれ、聖族と魔族はこれを育て、互いに聖魔戦争に利用した。
残っている記録書によると聖魔戦争は歴史上に9回起きたと記録されている。
聖魔戦争の歴史は深く、およそ三千年前から続いている。
このように長い間、戦争は繰り返されたが、勝敗はいつも引き分けで終わっていた。
理由は勇者と魔王が9回中すべての戦争で共倒れとなり、終戦しているからであった。
聖魔の溝は聖魔戦争が引き分けるたびにより一層、深まっていた。
そんな中、この聖魔戦争に終止符を打つべく立ち上がった変わり者の魔族がいた。
”魔族長17代目 真祖の吸血鬼 グレイ・ヴラド・サリヴァン“である。
この吸血鬼は魔族の民から「暴虐の君主」「冷酷無情な王」などと呼ばれていた。
しかし、本当は人が傷つくことを良しとせず、誰よりも聖族と魔族のしがらみにより起きる悲劇を嘆いていた。
グレイはこの現状を変えるため、魔族長を目指し、死に物狂いの努力のはてに族長へと至った。
グレイが魔族長に就任してからしばらくの間は魔界は聖族との協定を目指していたが、グレイの思想に反感を持つ者たちが大規模なクーデターを起こしてしまう。
グレイはそのクーデターによって受けた不意打ちにより瀕死に陥ってしまう。そして、信頼できるたった一人の従者と共に魔界から逃亡していた。
グレイは逃亡中、自分を情けなく思い、嘆いていた。
「何もできなかった…」
「また罪なき人々が犠牲者になってしまう…」
従者の背中で力なく己の無念を呟いていた。
一方で、同時刻にて全く同じことが聖界でも起きていた。
”聖族代表9代目聖女 戦乙女隊出身 ソフィア“彼女もまたグレイと同じ思想を持ち、聖女を目指し、そして国に裏切られた哀れな翼人族であった。
ソフィアも逃亡中に重傷を受けてしまい瀕死と陥ってしまう。
部下と共に逃げながらソフィアは無言でただただ涙を流していた。怒り、悲しみ、様々な感情を混ぜた涙。
止めたくても涙は止まらず、瞼を力強く閉じてもソフィアの後悔、不甲斐ない気持ちと同じように涙が溢れ出た。
平和を願った二人の聖族と魔族。哀れにも国に裏切られ、醜態を晒しながら必死に逃げ続けた。
しかし、この時運命の歯車が動き始める。
二人が逃亡の最中、向かう先が偶然にも同じ場所であったからだ。
初投稿です!右も左も分からず悪戦苦闘です。