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無口な異形の青年は、生意気女子高生に振り回される  作者: 探偵とジョーカーのパソドブレ企画
8/8

-エピローグ- 異形の青年といつか大人になる女子高生

「夜子、このひと月本当にありがとう。助かった」

 山ほど受けていた依頼の、最後のひとつの報告を終え、おれは夜子を送り届けるために御守探偵事務所へと向かっていた。

「どういたしまして。今度はキャパオーバーになるまで依頼受けないでくださいよ。私だっていつも暇なわけじゃないんですから」

 そう言う夜子が顔を顰めているのは、おれに呆れているのか、はたまたすれ違った車のライトに照らされ眩しかったからなのか……。後者だとは思うが、前者も否定はし切れない。

「わかっている。次からは気を付ける」

「そうしてください。ま、どうしても困ったら声をかけてもらっても構いませんけど?」

「ふ……。生意気な」

 したり顔で言ってくるものだから、おれは夜子の髪をぐしゃりとかき混ぜてやった。

 夜子の髪は、子供の頃撫でてやった時の柔らかな髪質と違い、艶やかでこしのある手触りをしていた。

「…………」

 些細なことではあるが、あの日からこんなことでも時間の経過を感じてしまう。


(岩弓の件を報告しに行った時、会長殿は結局何も仰らなかった……)


 ――そんなことを考えていると、パシリとおれの手が跳ね除けられた。

「ちょっと、止めてください」

「悪い悪い」

 ムッとした顔で髪を整えている夜子にそう言って笑いかけると、夜子は「急になんなんですか」と睨んでくる。

「なんだか最近の火之さん変ですよ」

「別にそんなことは無いだろ。そうむくれるな」

「……むくれてるから言ってるわけじゃないんですけど」

 夜子はそう呟くと「ま、違うって言うんなら信じますよ」と目を細めた。――いや、それは本当に信じている目つきか?

「あ、そうだ。――火之さん、このあと時間ありますか?」

「あるが……。なんだ?」

「今日はうちでご飯食べていきません? 『一ヶ月お疲れ様でした会』をしましょう」

「なんだそれ。というか……、いいのか?」

「はい。今日家を出る時、夕飯に火之さんを誘ってもいいか訊いてOKを貰いましたから」

「おれはそれを今初めて聞いたが……」

「そりゃそうですよ。言い忘れていたから今話してるんです」

「――ふっ」

 何故か堂々と言い放つ夜子に、おれはつい吹き出してしまう。

「笑ってないで答えてください。来るんですか? 来ないんですか?」

「行くよ。手土産はいるか?」

「いりません。別にうちの人達、そういうの気にしませんから」

「――そうか。まぁ、礼は言わなければ」

「礼?」

「末娘をひと月も連れまわしてしまったからな」

「なんですか、その言い方は」

 夜子はそう呆れたように言うと、くすりと笑みを漏らした。少女らしい、朗らかな笑顔だった。

「一ヶ月、お疲れ様でした」

「夜子もな」


 こうしておれの、慌ただしい一ヶ月が終わった。


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