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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
2章 南米共同戦線
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2章-アマゾンでの戦い②-


「拡散式〈ドラゴンブレス〉ってね!」


迫りくる無数の土の腕を躱しながら〈ドラゴンブレス〉のビームを魔法によって拡散させ、あちこちから生えてくる腕をまとめて根本からへし折っていく。

あくまで拡散しただけでエネルギーの総量に変化はないが、複数の目標や広範囲への攻撃をするにはうってつけだ。


『〈アサルト〉、ちょっと動かないで!』


突然の制止の言葉に反射的に動きを止めれば〈ブラスト〉がミサイルを辺りにばらまき、シオンの近くの地面から生えてき始めた腕の根元を根こそぎ爆破している。


「ありがと!」

『どうも!』


リーナに軽く礼を言ってから腕が密集している辺りを目指して〈アサルト〉を飛ばす。

その間も迫ってくる腕はあるが、〈アサルト〉の速度に付いて来られる腕はない。冷静に撃つか斬るかで対処していく。


「そんでもって、拡散!」


空中で大量の腕に追い回されていた〈スナイプ〉の周囲に拡散した〈ドラゴンブレス〉を撃ちこんでまとめて薙ぎ払い、そのまま〈スナイプ〉のそばまで移動する。


『シオン、ありがとう!』

「いいえー。〈スナイプ〉は手数少ないしね」


基本的には遠距離狙撃を想定している〈スナイプ〉は単発の射撃武器がメインで弾丸をまき散らすマシンガンなどは装備されていない。

はっきり言って、敵の数や手数が多い戦いにはあまり向いていないのだ。


『他のふたりはどうかな?』

「委員長は俺の手助けしてくれたくらいだから大丈夫だろうし……実技トップを心配する必要はないんじゃないかな」


ちょうどシオンたちの視線の先を〈セイバー〉が駆け抜けていく。

右手にメイン兵装の〈アスカロン〉、左手には一般的な機動鎧用のアサルトライフルを手にした〈セイバー〉は果敢にも迫りくる無数の腕に対して真正面から突撃している。


一見無謀にも見えるその行動だが、迫る腕を最小限の動きで躱しては叩き斬るか銃弾を至近距離で撃ち込んで破壊していく。

鬼神のごとく暴れ回るハルマに脅威を感じたのか、こちらに迫る腕が減ってきているほどだ。

あんな芸当、シオンには到底不可能だろう。


『アハハ……ハルマは負けず嫌いだからね』

「負けず嫌いって……誰と張り合ってるんだ?」

『シオンだよ。……少し前まで君任せだったの気にしてるみたいだよ』


シオン任せだったのは単なる策席の都合なのに、と思わないでもないが、自分の敵視している人物が活躍していれば確かに面白くはないだかもしれないと思い直す。


「じゃあ俺も頑張らないと。怠けてると手抜きするなって叱られそうだしね!」


シオンは〈ドラゴンブレス〉の銃口を真上に向けて、唱える。


「天より来たるは数多の光、煌めき走れ、破邪の力を示せ!」


上空に展開した魔法陣に向けて〈ドラゴンブレス〉を放てば、それに呼応するように無数の光の弾丸が空から降り注いだ。

友軍機だけは避けつつ、とにかくグランダイバーの同化範囲一帯に光の弾丸を落とす。

狙いは甘いがとにかく量だけは膨大なので狙わずとも土の腕には当たっていく。


『シオン! 滅茶苦茶するんじゃない!』

「大丈夫! お前らには当たらない!」

『そういう問題じゃない』

「でも、いい感じに効果出てきたっぽいよ?」


シオンに悉く破壊された腕が再び地面から生えてこようとしているが、その動きが最初と比べて鈍い。


ここまでの戦いによる疲弊、というのもあるが最大の原因はシオンたちの作戦、その第一フェイズにある。


前提として、グランダイバーが大地と同化している間は大したダメージを与えられないので、なんとかして同化先の大地から追い出す必要がある。


しかし普通に考えればグランダイバーは簡単に大地から離れたりしない。

大地と同化していればそれだけ自分にとって有利だからだ。

さらに一度大地との同化を止めさせたところで、新たに同化できる大地は無限に広がっている。


つまりシオンたちは、大地と同化し続けたいグランダイバーが大地から逃げ出したくなるように仕向けると同時に、一度逃げた後すぐには再同化できないようにする必要があるわけだ。


そこで重要になるのが、≪魔女の雑貨屋さん(ウィッチ・マート)≫お手製の銃弾や火薬などのアンナ曰く魔女印の武器たちである。


これらの武器は半霊体相手であっても着弾させられるだけではなく、アンノウンたちにとって絶大な効果を発揮するように魔法が付与されている。

吸血鬼(ヴァンパイア)にとっての太陽の光、あるいは狼男にとっての銀の弾丸のようなもので、例え銃器を用いて体に撃ち込まれずとも、弾丸そのものに触れるだけでもアンノウンたちにとっては大きなダメージにつながる。


まさに必殺の武器(・・・・・)だ。

そして、例えどんな存在であろうと、自分にとって毒でしかないモノがばらまかれている大地と同化したいはずがない。


ここまであまり効果がないとわかっていながら土の腕を相手にし続けたのは、グランダイバーの気をそらしつつそれらをばらまくためだったというわけだ。


銃弾は言うまでもなく、ミサイルの中にはアンノウン特効の魔法を付与した金属片が仕込まれており爆発と共に辺りに散らばり大地に突き刺さる。

魔女印の武器を使っていなかったシオンも、まき散らしていた光線にちゃんと武器に付与されているのと同じ系統の魔法を仕込んである。弾丸や金属片と違って時間経過で効果が消えてしまうが、この作戦中は十分効果が残る。


そんな銃弾やら金属片やらが散らばっている地面など、アンノウンにとって地獄のようなものだろう。


万が一にも相手に気取られないように戦いの中でばらまいたので、途中で逃げられるようなこともなくこの一帯への仕込みを終えることができた。


特にたった今デタラメに落とした光の弾丸の雨は十分決定打になったはずだ。


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