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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-駆け抜けろ①-


『私ガ道ヲ切リ開ク』


〈ミストルテイン〉から飛び出してすぐ一番前に躍り出たソードの魔装が剣を構え、振るう。

シオンの目では一閃しただけにしか見えなかった一撃は、無数の斬撃となって前方から迫りきていたアンノウンの群れを細切れにしてしまった。


『行クゾ!』


そのまま突っ込むソードにシオンたちも続く。

正面の道を塞ぐアンノウンたちに関しては引き続きソードが斬り伏せてくれるだろう。


「(だったら俺は……!)」


一番前を行くソード、それに続くアキトの〈パラケルスス〉とハルマの〈スサノオ〉のさらに後ろにシオンはつく。


「とりあえず、ついてくんな!!」


後方から追いかけてくるアンノウンたちに向け、拡散させた〈ドラゴントゥース改〉を放って薙ぎ払う。

ものの十数秒で再びわらわらと群がってくるが、それをまた薙ぎ払うを繰り返す。


「朱月! 勝手についてきてる以上は役に立ってくれるんだろうね!」

『わかってる! 横からくるのは任せろ!』


そう答えた朱月は〈アサルト〉でアキトとハルマの周りをぐるぐると回るように飛びながら側面から襲いかかってくるアンノウンたちを斬り伏せ、焼き払っていく。


前をソードが、側面を朱月が、そして後方をシオンが守るという布陣で、書き換えの要である≪月の神子≫2人を守りながら【禍ツ國】を目指す。

朱月が手伝ってくれるのは予定外ではあるが、おおよそ最初から決めていた作戦通りだ。


「(この作戦のまんま【禍ツ國】に殴りこめればそれで万々歳だけど……)」


そう簡単に行くとはシオンはもちろんこの場の誰も思ってはいないだろう。


『! 全員、上ヘ!』


ソードの警告に全員が即座に反応し、一気に高度を上げる。

その直後、先程までシオンたちがいた位置を黒い閃光が駆け抜けた。


『さっきの戦艦型か!』


ハルマの言った通り、先程〈ミストルテイン〉に攻撃を仕掛けてきた戦艦型のアンノウンが五体。船首をこちらに向けている。


「全員、あれには警戒してください。もししっかり戦艦ってものを再現してるなら主砲っぽい大技しか使えないなんてことはないですよ」


そんなシオンの予想に答えるように、戦艦からミサイルが発射された。

実際はあくまでミサイルを模したものというだけだろうが、この際それはどうでもいい。

単純に、シオンたちの邪魔をする攻撃のバリエーションが増えてしまったというだけだ。


『攻撃パターンが多彩なのは面倒だが、戦艦を模してる以上小回りはきかないはずだ。倒さず横を通り抜けるぞ!』

「了解!」


再びソードを先頭に進む。

あえて反撃などはせず攻撃を迎撃したり避けたりするにとどめ、アキトの策通りにとにかく相手の横を突破することに集中する。


見立て通り小回りのきかない戦艦型へ距離を詰めるのにはそれほど時間はかからなかった。


『突っ切るぞ!』


思惑通り戦艦型の側面を真っ直ぐに飛ぶ。

このまま通過できればありがたいところだが、当然そう簡単にはいかない。


『シオ坊! なんか奴さんの横んとこに砲門っぽいのが生えてきんだが、これは仕掛けてくるやつか!?』

「そう! というわけで頑張るよ!」

『鬼使いが荒すぎるな!』


直後、側面に出てきた多数の砲門から一斉に魔力の弾丸が放たれる。

朱月の〈アサルト〉がハルマの〈スサノオ〉に、シオンの〈トリックスター〉がアキトの〈パラケルスス〉の横にピッタリとついて襲いくる弾丸やらミサイルやらを斬って弾いて打ち落としてと忙しなく迎え撃つ。


「しゃっ抜けた!!」

『じゃあなウスノロ!!』


なんとか大量の攻撃を掻い潜って戦艦型の横を通り抜ければ、目に見えてこちらに向かってくる攻撃が減る。特に戦艦型からの攻撃はほぼなくなったと言ってもいいだろう。

もちろんそれでも無数のアンノウンが襲いかかってくる状況に変化はないが、かなりマシになったのは間違いない。


「そうこうしてたら件の道が見えてきた――というかもうあれは“穴”ですね」


ここまでアンノウンの群れに隠されて見えていなかった【禍ツ國】に通ずるであろうポイント。

それをシオンたちは“道”としていたが、実際に目にしてみればそこにあるのは空中にぽっかりとできた真っ黒な“穴”と呼べる代物だった。

まだ距離はあるはずなのにそれなりにはっきり見えているあたり、かなりの大きさなのだろう。


『あれに飛び込めば【禍ツ國】に行けるってことだよな?』

「うん、気配からして間違いないと思う」


穴からはとてつもない穢れの気配が感じられる。

これで【禍ツ國】に通じていなかったならいったいこの世のどこに通じているのだという話だ。


『それじゃあこのまま突っ込んで――いや、そうもいかねぇらしいな』


気楽な調子だった朱月の声は途中から緊張を帯びる。

何故なら、今まさに正面に見えている穴から大きなシルエットが複数出てきているからだ。


『ちょっと待てよ……ここに来て戦艦型が六体出てくるとか冗談じゃないぞ』


ハルマの言葉通り、穴から出てきてこちらを阻むように浮かぶ戦艦型アンノウンは六体。

一体だけでも突破に苦労したことを思えば、あまりにも厄介すぎる障害だ。


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