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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-作戦開始③-


〈サーティーン・魔導式〉、〈ワルキューレ〉の連続攻撃によって薙ぎ払われるアンノウンたち。

とはいえこの程度でどうにかなってくれるのなら、朱月やクリストファーたちはとっくに“封魔の月鏡”を破壊できていただろう。


『結構倒したはずなのに減った気がしねぇな!?』

『〈ラグナロク〉のような大火力でもなければ、とても実感はできなさそうですね』


二機の攻撃で普通なら十分すぎるくらいの数が減ったはずなのに、すぐに別のアンノウンたちが立ち塞がってくるのだからとてもそんな気がしない。

目に見えて結果が出ないというのは精神的に辛いところがあるだろう。


『けど、立ち止まってたらそれこそ死ぬっすよ!!』


一度〈ミストルテイン〉の防壁圏内に退いた二機と入れ替わるように飛び出した、シルバの〈クリストロン〉が大型のクローで手近なアンノウンを仕留め、そのまま群れを引っ掻き回すように一体ずつ仕留めていく。


『確かに、その通りだよね!』


〈ミストルテイン〉甲板に立つレイスの〈スナイプ〉。

その手に構えられた〈フェイルノート〉から放たれた閃光が、たった一発で五、六体のアンノウンをまとめて貫く。

ほぼ間髪入れずに放たれた次の一射もまた同じように複数のアンノウンをまとめて貫いて数を確実に減らしていく。


『こうなったらもう、やるしかないしね!』


〈プロメテウス〉を乱発するために、格納庫からケーブルを引っ張ってきてほぼ固定砲台と化しているリーナの〈ブラスト〉が景気良く大火力の閃光を撃ちまくる。

リーナらしからぬ荒っぽい雑な戦い方だが、今回においてはかなり頼もしい。


『〈ラグナロク〉再チャージ完了! 射線に友軍はいないわね? よし撃っちゃえラムダ!』

『応!』


ミスティの指示も待たず、アンナの指示で発射される〈ラグナロク〉。

艦長が号令を出すのが基本で最初はそうしていたはずだが、最早そういう丁寧なフローなど気にしている余裕はないということなのか、ミスティからアンナに文句が飛ぶこともない。


『幸い、なんとか群れの中を突き進むことができています! このままできるだけ突入部隊を前まで運びますから、支援部隊各位は引き続き攻撃の手を緩めないでください!』


下手をすれば突っ込んで早々に全方位から押しつぶされていた可能性もあったが、機動鎧たちの奮戦に〈ミストルテイン〉を守るサーシャの魔力防壁。さらに〈レイル・アーク〉を中心としたレイル隊の支援もあってそうはならずにいられている。


「っていうか、後ろの〈レイル・アーク〉は大丈夫なんですか? 普通に考えてそっちのが危ないんじゃ」


〈ミストルテイン〉は機動鎧部隊が前に集中しているし、そもそも武装も後方は薄い。

続いてきてくれている〈レイル・アーク〉も後ろ向きに航行しているわけでもないのだから同じように後ろからの攻撃には弱そうなものなのだが。


『うん、大丈夫そうよ。……なんかアーサーさんがすんごい勢いで大暴れしてて』

「あ、そういえばあの人もバケモノでしたね」


アーサーが戦っているところを見たのはクラーケンの一件くらいのものだが、あの時だけでもかなりの暴れっぷりだったのは後方にいたシオンもよく覚えている。

あの腕前があるのなら寄ってくる有象無象のアンノウン程度薙ぎ払うのも造作ないだろう。


『……それにしてもシオン・イースタル。自分も動くとは言い出さないのですね?』

「突入部隊は温存って言ってきたのそっちでは?」

『それを貴方が素直に聞くと思っていなかったという話です……何か企んでいませんよね?』


ただでさえ大変な戦場でミスティが彼女らしくない雑談のようなことをし始めて何事かと思ったが、どうやら命令に素直に従っているシオンを怪しんでいるらしい。

彼女の中では雑談ではなく、内に潜むリスクの有無の確認という位置付けなのだろう。


疑われる原因が自分にあるのはそれはもう重々承知しているので、ここはふざけることなく素直に答えておく。


「そこはまあ、突入した先がどうなってるかわかったもんじゃないですからね」


シオンは一応【禍ツ國】に立ち入ったことがあるが、ほぼ安全圏の【月影の神域】に限るし、かつての安全圏が今も安全かどうかもわかったものではない。

入り口周辺がこのような状態であることを思えば、【禍ツ國】がもっと酷いことになっていたとしてもおかしくはないだろう。


ただでさえ肉体を朱月に奪われていてベストコンディションとは言い難い今、シオンとしても最大限温存しておきたい。


「俺のふんばりどころはあくまで突入後。ここはそっちの作戦に甘えさせてもらいますよ」

『なるほど。嘘はなさそうで安心しました。……艦長と戦術長に貴方の手綱を握るためにいろいろ聞いていたのは無駄になりましたが、まあいいでしょう』


ミスティがさらりと聞き逃せないことを口走っていたが、それに口を挟むより先にコウヨウが叫ぶ。


『他よりも反応の大きなアンノウンが複数、前方から高速で接近してきます!』


警告に慌てて前方に目を向ければ、無数のアンノウンの隙間を縫うようにこちらに向かってくる影が複数見えた。


問題は、そのアンノウンの姿だ。

他のアンノウンと同じく漆黒ではあるが、その人型に近いシルエットにはあまり丸みがなく、体表も毛や皮膚に覆われていない。あれらはまるで――


『あれは……機動鎧!?』


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