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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-作戦開始①-


ある程度距離を詰めていたところを、〈レイル・アーク〉の短距離空間転移に相乗りさせてもらう形で〈ミストルテイン〉一気に太平洋へと向かう。

いつでも出撃できるようにシオンはもちろんパイロットは全員各機動鎧の中だ。


『これ、空間転移で一気に道に突っ込んだりできねえの?』

「本部の時と同じで空間が歪みまくっててまともに転移できないって状況」

『実は空間転移って結構ポンコツ魔法なのか?』


気の抜けたギルの指摘に違うとは言えないのが悲しいところである。


とにもかくにも空間転移で移動できるのは開いた道の影響を受けていないところまで。あとは小細工なしで道を目指すしかない。


『次の転移で空間転移が可能なギリギリの位置に出ます。アンノウンが集まっているエリアからはある程度距離はありますが、転移の魔力に反応される可能性もありますから注意を』

『場合によっては転移後すぐに緊急発進なんてこともあるからねそのつもりでね!』


アンナの言葉に各々が了解の返事をする中、空間転移特有の感覚が来る。

そうして転移が終わったか終わらないかの時点で、シオンはとんでもなく嫌な気配を感じ取った。


外の様子を目で確認するまでもない。

〈ミストルテイン〉の正面には間違いなく気が遠くなるほど大量のアンノウンの姿があることだろう。


『アンノウン反応……千……万……え、エラー!?』

『エラーってどういうことよコウヨウ君!?』

『えっと、おそらく反応の数が凄まじい上に密集しているので……そのせいで数をカウントできなくなっているのではないかと』

「まあ、数なんてわからなくてもいいんじゃないですかね」


下手に数が分かりすぎればむしろ気が滅入るだけだ。

「とにかくたくさんいる」くらいの認識が今回はちょうどいいだろう。


『にしても、多いな。いや、予想はしていたつもりなんだが目の当たりにすると……』


各機動鎧には〈ミストルテイン〉正面の映像データが共有されている。

アキトの言う通りアンノウンの数は凄まじく多く、群れというよりは黒い壁のように見えるくらいだ。


そしてその壁の一角で閃光が瞬いているのがここからでも確認できる。


『〈アイランド・ワン〉および“幽霊船”と思しき魔力反応。加えて〈グングニル〉と〈クリストロン〉も多数確認できます』

『しっかり戦闘中って感じね。数は明らかにアンノウンの方が多いはずだけど……』

『かと言って押されている印象はありませんね』


アンナとミスティの分析の通り、クリストファーたちの戦力が落とされている様子はない。

数がいるので終わりは見えないものの、あくまでクリストファーたちが一方的にアンノウンを倒しているようだ。

長引けば状況も変わってしまうかもしれないが、ひとまずはシオンたちにとっても悪くない状況である。


「コウヨウさんか、他の誰かでもいいんですけど、朱月の気配か〈アサルト〉の反応とかは確認できますか?」

『魔力の気配はダメだけど〈アサルト〉の識別信号は確認できるよ。……あっちの戦闘の最前線よりさらに奥、現状一番【禍ツ國】への道に近い位置にいるけど……動きが激しい割に前に進めてない……?』


ブリッジから共有された情報を見ると、確かに反応が激しく動いているものの道への距離がなかなか詰められていない。


「これは……思った以上にやばそうですね」

『どういうことですか?』

「朱月はかなり強いんですよ。その上機動力重視の〈アサルト〉に乗ってるんです。なのに、全然前に進めてない」

『火力も機動力も、さらに言えば戦いの経験値も十分にあるはずの朱月でも切り込めないほど、【禍ツ國】への突入は難しいということになるな』


朱月もシオンたちと同じくアンノウンを相手にする必要はないはず。

にもかかわらずアンノウンを無視して突撃するということもできずにいるということは、無視できないほど大量のアンノウンがひしめいているということなのだろう。


『他に近づけない理由がある可能性は? 防壁で阻まれてるとか』

「そんなのがあれば俺とか師匠が気づけてるはずです。でもそんな気配は全然ありませんから、あくまでアンノウンが多すぎるっていうのが理由じゃないかと」


黒い壁のように見えるなどと思っていたが、朱月が到達しているポイントまでいけばまさに壁のごとくアンノウンがひしめいている。なんてこともありそうで笑えない。


「まあ、朱月がまだ突入できてないならこっちにとっては好都合です。こっちのやることは変わりませんしね」

『ああ、そうだな』


思っていたよりも難易度が高そうではあるが、やらなければいけないことは変わらない。

とにかくこの気の遠くなるような数のアンノウンのど真ん中を突っ切って突撃するだけだ。


『〈レイル・アーク〉並びにレイル隊総員、準備は整っています。加えて≪銀翼騎士団≫本体、および協力者たちも着々と集結しつつあります』

『〈ミストルテイン〉全システムオールグリーン。機動鎧各機の出撃準備も整っています』


レッド、ミスティのそれぞれからいつでも開始できるという旨が伝えられる。


『アキト。全体指揮は僕がやるが、作戦開始の合図は君がすべきだと思うよ』

『……わかった』


アーサーに促され、アキトは軽く息を吸う。


『作戦開始! “封魔の月鏡”の書き換えを確実に遂行するぞ!』


アキトの宣言と合わせ、シオンの駆る〈トリックスター〉は〈ミストルテイン〉から勢いよく飛び立った。


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