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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-最後の作戦会議-


来る朝。作戦開始が迫る中、シオンたちは再び〈ミストルテイン〉のブリーフィングルームに集まっていた。


「それでは、作戦についての説明を始める」


アキトの言葉に集まった面々は静かに頷く。


「俺たちの目的は、“封魔の月鏡”の書き換え。そのためには≪月の神子≫が【禍ツ國】の中心部――【月影の神域】に辿り着き、書き換えのための術式を発動する必要がある」


そして、それこそが〈ミストルテイン〉にとって最重要事項と言ってもいい。


「そのため、作戦の基本方針は“突撃”に尽きる。【禍ツ國】へ通じる道の周辺に溢れているであろうアンノウンの群れを最短最速で突破して、【月影の神域】を目指すんだ」


とにかく目的地に≪月の神子≫が到着できればいいのだから、アンノウンたちに構う必要はない。

アンノウンの群れのど真ん中を突っ切らなければならないのはもちろん危険ではあるが、時間をかければクリストファーたちに先に“封魔の月鏡”を破壊されてしまう可能性もある以上、これ以上の作戦はないだろう。


「とはいえ全員が【禍ツ國】に突入する必要はない。そのため部隊を大きく二つ。実際に突入して書き換えを実行する突入部隊と、突入部隊のサポートに徹する支援部隊に分ける」


部隊を分けるのは順当な判断で、特に異論などが出ることもない。

問題は、その割り振りだ。


「突入部隊にはハルマ、シオン、ソード殿、そして……俺が〈パラケルスス〉で出る」


アキトの発言で驚きの声が少し上がったが、シオンはなんとなくそんな予感がしていた。

そもそも専任の搭乗者がいない〈パラケルスス〉までしっかり整備の指示があったわけであるし、≪月の神子≫が書き換えに必要なことを考えればアキトなら自分で行こうとするだろう。


「……反対しないんだな」


アキトはいつの間にかシオンのことを見ていた。

どうも、このことを明かせばシオンが反対してくるだろうと考えていたようだ。


「反対したい気持ちはありますけど、反対したってやめてくれないでしょ?」

「もちろん」

「……そこまで堂々と言います?」


アキトの態度はともかくこのタイミングで反対したところで聞き入れてはもらえないだろうし、突入する≪月の神子≫がハルマひとりというのはリスクが高い。

艦長という立場ではあるが実力あるパイロットのアキトも機動鎧に乗り込んで突入するというのは、この作戦では最善の判断だと言っていいだろう。


「アキトさんが突入するのはいいとして、〈ミストルテイン〉はどうするんですか?」

「〈ミストルテイン〉の指揮はミスティに。〈ミストルテイン〉と〈レイル・アーク〉の合同部隊全体の指揮はアーサーに任せる」

「はい、お任せください」

「ああ、任されたよ」

「ついでに、アキトくん不在の〈ミストルテイン〉の魔力防壁その他はサーシャさんに任せてちょうだいね」


ミスティたちには事前にアキトが前線に出るのは伝えてあったようで、話はしっかりまとまっているようだ。

となればシオンから言うべきことなどは特にない。


「作戦の流れは大きく2段階だ。まず、全戦力をもって俺たち突入部隊が【禍ツ國】に突入。その時点で支援部隊は下がってくれていい。あとは第二段階として突入した俺たちが書き換えを実行すると共に母さん――コヨミ・ミツルギとトウヤ君を回収して【禍ツ國】を脱出する」

「艦長、繋がってしまった道はどうするんですか?」

「サーシャさんたちに無理を言って、書き換えの術式の中に道を閉じるための術式を追加してもらった。道を開いた元凶であるトウヤ君をこちらの世界に連れ戻せればひとまず封鎖できるだろう」

「……それから、トウヤのことはどうするんですか?」


ハルマの問いに、アキトは少し黙り込む。


「……正確なところは不明だが、トウヤ君が“魔物堕ち”となっている可能性は非常に高い。ひとまず【禍ツ國】から引き離すのを優先するが、その後彼を元に戻せるかは「戻しますよ」


アキトが「わからない」と口にするより先に、シオンははっきりと告げる。


「トウヤのことは元に戻します。それに関しては俺に任せてもらえればなんとかしますからそのつもりで」


アキトたちはともかく、シオンはコヨミからトウヤのことを助けてほしいと以前から頼まれている。

仮にコヨミから頼まれていなかろうが、トウヤのことを知ったシオンは彼のことを助けたい。


であれば、そこから先は「なんとしても助ける」というシンプルな話でしかない。


「方法があるなら説明してもらいたいんだが?」

「絶対に反対しないって約束してくれれば説明してもいいですよ?」

「反対してもやるだろお前なら」

「もちろん」


先程のアキトと同じように言葉を返してやれば、アキトは深く溜め息をつきながらもそれ以上何も言わなかった。


「……無茶をするつもりなのはわかった。だがそれで死んだりしたら許さないぞ」

「わかってますよ。……死なないって約束は他にもしてるんで」

「ならいい」


これで作戦に関する話は一通り片がついた。あとは作戦開始まで待つのみだが――


『こちらブリッジ! 太平洋に偵察に出ていた≪銀翼騎士団≫の部隊が、〈アイランド・ワン〉を発見したそうです!』


クリストファーたちの〈アイランド・ワン〉が【禍ツ國】への道のある太平洋上に現れたとなれば、その目的は言うまでもない。

予想通り、あちらも動き始めたということだろう。


「各協力者に連絡を! 多少予定より前倒しにはなるが、作戦を開始する!」


こうして、世界の未来をかけた戦いに向けて全ては動き出した。


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