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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-“剣”を名乗る騎士①-


〈レイル・アーク〉との合流の翌日。

〈ミストルテイン〉の格納庫には≪魔女の雑貨屋さん(ウィッチ・マート)≫が在庫として抱えていたエナジークォーツが空間転移で搬入された。

成人男性がゆったり入れるくらいの木箱四〇個が並んでいる様はなかなかの光景だ。

加えてすでに残る六〇個のエナジークォーツを作るために魔女たちが作業を始めてくれているらしい。


それでも完全に準備が終わるまで二ヶ月以上はかかるという点はネックだが、そこは焦ってどうにかなるものでもないので仕方がないと割り切ることにする。


「(最悪、一旦は〈光翼の宝珠〉と今ある四〇個だけで書き換えをやっちゃってもいい)」


元々メインは〈光翼の宝珠〉であり、一〇〇個のエナジークォーツは宝珠に不具合が起きた時の保険だ。

極論〈光翼の宝珠〉だけでも“封魔の月鏡”の維持はできるので、残り六〇個は準備出来次第あとから持ち込むこともできなくはない。


もちろん、一番いいのは全部準備ができてからだが、そういう選択肢もある。


「(まあ、そもそも一番いい選択肢はこれじゃないんだけどね)」


人に気づかれない程度にため息をつきつつ、格納庫を軽く見回す。


普段通り十三技班の面々がうろうろしているが、実のところ仕事はない。

というのもここしばらく英国付近に留まっている影響で出撃がなく、各機動鎧の整備は全部終わってしまっているのだ。

その上、なんだかんだと〈トリックスター〉など新型機動鎧三機も作り終えたので、これまでと比べればやや余裕がある状況なのである。


そんないつもより少しだけのんびりとした格納庫を眺めていると、何やら大きなシルエットがひとつ。


「……ソードさん?」

『≪天の神子≫。久シブリダナ』


見間違いかと思って近づいてみたが、間違いなどではなかったらしい。

漆黒の鎧に身を包んだレイル隊の客将は格納庫の一角でずいぶんな存在感を放っていた。


「どうしてここに?」

『深イ意味ハナイ。シバラク〈レイル・アーク〉ノ中以外景色ヲ見テイナカッタノデナ』


たまには普段と違う景色が見たくなってふらりと〈ミストルテイン〉の格納庫に来た。ということらしい。


「なるほど。まあそういうこともありますか」

『……不審ガラナインダナ』

「あなたがこのタイミングで嘘つく意味あります? それに、まあ、()()()()()()()もあるので」


シオンの投げかけた言葉でソードの纏う空気が少し変わった。

そうなるであろうことをわかっていたシオンはそれに怯まずただソードのことを見つめる。


『……君ハ、ドコマデ理解シテイル?』

「とりあえず、その鎧の()()がどうなってるかは理解してます。それ以外にもなんとなくそういうことかなーって思ってることはありますけど、確証はありませんし、あんまり詮索する気もないです」

『ソウカ。サスガハ、サーシャノ弟子ダ』

「お褒めに預かり光栄です。ま、今の俺とあなたは似た者同士みたいな感じでもありますから、仲良くしてください」


少しばかり張り詰めていた空気が緩んだところでにこやかに微笑みかければ『フ』とソードも静かに笑った。

外見はずいぶんと取っ付きにくそうな印象だが、案外冗談も通じるタイプなのかもしれない。


『ソウイエバ今更ダガ、私ガココニイルト、君タチ技術者ノ邪魔ニナルダロウカ?』

「大丈夫ですよ。あなたちゃんと邪魔にならない隅っこにいてくれてますし」


今ソードが立っている位置なら、絶対に技術者たちの邪魔にならない。

厳しいゲンゾウであっても何も言わないくらいのベストポジションだ。


「あえてケチをつけるなら……【異界】から来たあなたが初めて足を踏み入れる人類軍の戦艦の格納庫において的確に邪魔にならない位置に立ってるってのはおかしな話ですよ?」

『……忠告、痛ミ入ル』


おそらく無意識であったであろう位置取りに、シオンは自身の頭の中にあるソードに関するとある仮説に関する確信を強めた。


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