終章-騎士団長との対面①-
〈ミストルテイン〉から〈シルバー・ウィング〉へと移動したのは、シオン、ガブリエラ、アキト、アンナ、レオナルドの5名。
ガブリエラの友人ということもあり、〈シルバー・ウィング〉の艦内に立ち入っても敵意ある視線を向けられることはない。
とはいえ、一切警戒していないということは流石にないだろう。
他の3人はともかく、シオンは気配などで騎士たちを刺激しないように気を付ける必要がありそうだ。
「(実際、レイル隊の騎士たちビビらせた前科もあるしな……)」
あえて子供の姿を選んでいるのも余計な警戒を招かないため。
今日のシオンはとにかく大人しくしておくのが目標だ。
「騎士団長はこちらでお待ちです」
「案内、ありがとうございます」
案内役の騎士がガブリエラに恭しく頭を下げるのを視界の端に入れつつ、開かれたドアの先へと進む。
広い一室は全体的に上品かつ豪華で、戦艦の中というよりはどこかの豪邸の一室かのようにすら思える。
≪銀翼騎士団≫が王国を守る騎士団であることを考えると、豪邸というよりは城の一室というイメージになるのかもしれない。
その中心にこちらに背を向けて立つひとりの男性。
ピンと背筋を伸ばした立ち姿からは堂々とした印象を感じられる。
髭を蓄えた老齢の騎士はゆっくりとこちらに振り返り、真っ直ぐにシオンたちを見つめてくる。
「ガブリエラ王女殿下。このギルベルト、貴方様がご無事であられたこと、心より嬉しく思います」
ガブリエラの前まで歩いてきたギルベルトが、その場に膝をついて恭しく頭を下げる。
声こそ低く落ち着いた響きだが、言葉の通りガブリエラの無事を本気で喜んでいるのだと不思議と理解できた。
「ギルベルト団長。そんなにかしこまらないでください。確かに私は王女ですが、≪戦乙女騎士団≫の騎士のひとりなのですから……≪銀翼騎士団≫の団長に頭を下げられては困ってしまうと以前もお伝えしたでしょう?」
「む……失礼。長年の癖というものはなかなか抜けきらず……」
ガブリエラに言われた通り顔を上げてその場に立ち上がったギルベルトは少しバツが悪そうにしつつ、改めてシオンたちを見る。
「姫様のご友人の皆様、申し遅れました。私はギルベルト・ガルブレイス……≪銀翼騎士団≫の団長を務めております」
「私は、アキト・ミツルギ。人類軍特別遊撃部隊〈ミストルテイン〉の隊長を務めております」
「……ミツルギ、ということは貴殿がイッセイ殿のご子息でしょうか?」
どうやらギルベルトもアキトたちの父親のことを知っているようだが、この言葉に対する反応にはやや困る。
レイル隊との接触がなければシオンたちはイッセイの事情を知り得ないが、レイル隊とのことは秘密にしているはずだ。
「……ああ。ひとつ先にお伝えしておきますが、私はアーサーから貴殿らのことを伺っていますよ」
「そうだったのですか?」
「ええ。クラーケンの一件についてもすでに聞き及んでいます」
となれば、ガブリエラの生存や〈ミストルテイン〉とレイル隊のつながりも把握済みだったというわけだ。
「……なんだ、それなら素直にレイル隊の人たちに仲介頼めばよかったわ」
「いえ。そのことは≪銀翼騎士団≫の中でも私しか把握していませんからな。こうして正面から呼びかけてくださった方がよかったでしょう」
ギルベルトはともかく他の騎士たちに不信感を与えずに済んだあたり、やはりアキトの判断は正しかったというわけだ。
「……となると、俺のことも聞いてる感じですかね?」
「ええ、聞いていますよ、≪天の神子≫殿」
できることなら最後まで正体を隠しておければと思っていたが、ギルベルトには最初からバレバレということらしい。
幸い、ギルベルトはシオンを警戒する素振りがないので、問題はなさそうだが。
「……さて、立ち話もなんでしょう。こちらへ」




