終章-導かれたその先で-
駆けつけたファルマ隊を名乗る騎士たち。
彼らのアンノウン掃討の手際は見事なもので、危なげなく、そして迅速にアンノウンたちは倒され、あっという間に〈ミストルテイン〉の周りは静かになった。
スピードという点でいうならシオンたちも同じくらいかもっと早く倒し切れるだろうが、無駄の無さという面に注目すれば、おそらく彼らの方が上だろう。
「流石、【異界】の精鋭部隊って感じですね」
「ああ、実力はもちろん指揮系統もしっかりしているんだろう」
クラーケンの一件ではそれどころではなくレイル隊の動きはあまり確認できていなかったが、もしかしたら同じくらいの実力があったのかもしれない。
『ガブリエラ王女殿下。貴方様がこの世界の人類軍の船に乗っておられる事情はわかりかねますが……同乗されている方々とはどのようなご関係なのでしょう?』
『この船、〈ミストルテイン〉に搭乗されているみなさんは私の友人です。決して刃など向けることがないようにお願いします』
『……かしこまりました。他の騎士たちにも伝えましょう』
王位継承権を捨てているというガブリエラだが、呼びかけてくる騎士の態度は恭しい。
そのおかげもあって、ひとまず平和的に話は進められそうだ。
『我々はギルベルト騎士団長の命により、皆様をお迎えにあがりました。これより騎士団長のもとへと皆様をご案内いたします。我らの船に続いていただけますでしょうか?』
「私は、この〈ミストルテイン〉の艦長、アキト・ミツルギです。そちらの指示に従います」
指示通りに騎士団の戦艦の後ろに続けば、〈ミストルテイン〉の周囲を数機の魔装がかためはじめる。
「これ、連行……ではないわよね?」
若干不安そうにするアンナだが、シオンはその心配は杞憂だと思う。
「ガブリエラへの態度からして大丈夫なんじゃないですかね? 見た感じこっちよりも周囲に気を配ってるっぽいですし」
「ああ。〈ミストルテイン〉を囲んでいるのも、レイル君のための敬語だろうな」
「万が一これが連行でなんかの拍子で攻撃されたとしても、アキトさんの魔力防壁は抜けませんよ」
シオンとアキトの説明でアンナや、言葉にこそ出していなかったが不安を覚えていたらしいブリッジの面々も安心したようだ。
あとは、指示された通りあとについていくだけでいい。
そうして先行する騎士団の戦艦についていくこと一時間ほど。
シオンは、とある気配を感じ取った。それはシオンに限らず、アキトやガブリエラも同じだろう。
「シオン、今、何かを通過したよな?」
「はい。多分、魔物避けと人避けの結界ですね」
そして、騎士団長のところへ案内されている最中にそんな結界を通過したのは偶然ではないだろう。
「センサーに反応。≪銀翼騎士団≫のものと思われる戦艦が、一、五、十二……とにかく多数!」
結界によって隠されていたのであろう戦艦が次々とセンサーに捕捉されていく。
結界に覆われ、無数の戦艦が集まっているここが、こちらの世界における≪銀翼騎士団≫の拠点となっているのは明らかだ。
そしてその無数の戦艦の中心に一際大きな戦艦がある。
「あの船は、〈シルバー・ウィング〉。≪銀翼騎士団≫団長が代々継承する、王国で最も強き戦艦です」
それこそがギルベルト・ガルブレイスがシオンたちを待つ場所であり、これからシオンたちが足を踏み入れる場所の名前だった。




