終章-次なる行き先は-
「――というわけで、〈ミストルテイン〉はこれから欧州の【異界】に制圧された地域に行きます!」
場所をブリッジからブリーフィングルームに移し、改めて集めた主要メンバーの前でレオナルドが宣言した。
先程までブリッジにいたメンバー以外は、艦長であるアキトではなくレオナルドが代表して話している時点で疑問しかないだろうし、当然、意味がわからないだろう。
「とりあえず、わかるように説明しやがれ」
呆れた様子のゲンゾウの言葉を受け、レオナルドは先程ブリッジで話した人類軍や各国の状況についてかいつまんで説明した。
ゲンゾウなどは人生経験豊富なこともあってか嫌そうな顔をしつつ、「そんなもんだろうなぁ」とため息混じりに口にしていた。
「そんな感じなので、このまま放っておいたら全然交渉まで話が進みそうにない。でもそれをゴルド元最高司令官が待ってくれるかわからない。……まあ、アキトが考えた代替案が間に合えば別に大丈夫かもしれないんですけどね」
とはいえ、こちらの代替案もまだ具体的な方法などを模索している最中であり、準備には時間がかかる。
現時点ではまだまだ見通しが立っていないこともあり、クリストファーに代替案のことを伝えてもいないし、いざ準備ができたとしてクリストファーが納得する保証も、成功する保証も今はない。
加えて、アキトの代替案が認められるにしても《境界戦争》は落ち着いている方がいい。
要するに、どちらに転ぶにしろ1日でも早く交渉が始まるに越したことはないというわけだ。
「で、人間はダメだから【異界】の方に働きかけようと思うわけです」
「具体的には?」
「“【異界】は戦いを望んでいないので、ここらで和平交渉をしませんか”みたいな感じで改めて人類側に呼びかけてもらうんですよ。……欲を言えば“六年前の件は、【異界】も反撃しすぎたのでその件に関する賠償は求めない”とか人類側が飛びつきたくなる餌をぶら下げてほしいんですけどそこはあちらの気持ち優先で」
人類側はとても能動的に動いてくれなさそうなので、【異界】から動いて受動的に動かざる得ない状況に持っていこうという考えである。
「まあ、放っておくよりはよっぽどいいな。ついでに一般人にも伝わるようにやってやりゃ、政治家連中はますます動かざるを得なくなるだろうよ」
「もちろんそのつもりです。ついでに、どこかちょうどいい国か人間かを名指ししてもらおうと思ってるんですよね。逃げ道塞いで「やるしかない」って状況まで持っていくのが一番早いですし」
つまり、誰も引きたくない貧乏くじを強制的に引かせた上で、民衆からのプレッシャーを与えようという魂胆なのだ。
シオンたちもそこまではブリッジで聞いていなかった。
「やることがえぐい」
思わずシオンがツッコミを入れると、「お前(君)もやるならそうするだろ」と当たり前のように言われた。対するシオンの返答は沈黙である。
「少々やり方が姑息というか……まあ、クリーンではないが、多くの人命もかかっている問題だからな。俺もレオナルドの考えに賛成だ」
レオナルドの考えにアキトが賛成すれば、実質〈ミストルテイン〉の次の方針は決まったも同然だ。
異論や他の意見がないか確認するために主要メンバーが集められているが、全員レオナルドの案に若干引きつつも反対する者はいない。
「一応確認だけど、ガブリエラ的には大丈夫? このえぐめのプラン」
「その、まあ、罪悪感ですとか躊躇いはそれなりにありますけど、人々のためにはなりますし……時にはこういったやり方も必要なのだと私ももう学んでいますから」
仁愛と秩序を重んじる“天族”としてそれはどうなのかと一瞬思ったが、ガブリエラが納得できているのであればシオンからとやかく言う理由はない。
「一番の重要人物であるガブリエラちゃんの同意も得られたし、反対意見もないならこの方針でOKってことでいいかな?」
「はい。私は問題ありません。すでに王位継承権はありませんが、私が呼び掛ければ≪銀翼騎士団≫と対話の場を設けることは可能なはずです」
本来一番難しい≪銀翼騎士団≫との接触はガブリエラのおかげで問題なく実現できる。
あとは、実際にこちらの提案を受け入れてもらえるかどうかだ。
「よし、話はまとまったな。――これより〈ミストルテイン〉は欧州へ向かい、≪銀翼騎士団≫との接触を試みる! 時間が惜しいからな、全艦に通達後すぐに出発だ」
アキトの号令に各々が了解の返事をし、〈ミストルテイン〉の欧州行きは決定した。




