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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
終章 選び取った未来
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終章-錬金術師のあれこれ②-


「裏でのやらかし案件で思い出したんですけど、あの白い“幽霊船”のことも聞いていいですか?」


白い船について、シオンとアキトに限っては見せてもらったことがあるし、あの船が水上を航行する船のようでありながら潜水艦でもあり飛行戦艦でもあるという極めて特殊な船であることも聞いている。

しかし、それがどういう方法で“幽霊船”になったのかがシオンにもわからない。


「“幽霊船”は海に沈んだ船や船乗りたちの集合体のような人外。かと言ってこの世界の海で沈んだ船全部がそうなるってわけでもない、割と運任せなものでもあります。新しく製造されたばっかりの船をどうやってそんな誰もよくわかってない“幽霊船”に仕立て上げたんですか? というかそもそも何のためにそうしたんですか?」

「まあまあ落ち着いてくれ。焦らずともちゃんと説明してあげるとも」


畳み掛けるようなシオンの質問を手のひらで制止してから、クリストファーはコホンとひとつ咳払いをした。


「順番は前後するが、何のための説明を先にしよう。と言ってもこれはシンプルで、戦力として非常に魅力的だったからさ」


“幽霊船”という人外の特徴を挙げるとなるとかなりの数がある。


シオンたちがすでに目にしているものだけでも、元々の存在の曖昧さや特殊な霧による人外すらも欺くステルス性能、必要に応じて自身の存在を分割することで艦隊として展開することすらも可能な単純な数のアドバンテージ、同一存在ゆえに実現する高度な連携能力などが挙げられるだろう。


そして何よりも強力なのは、()()()()()()()()という点だ。


「高いステルス能力、数の暴力に、高度な連携。極め付けには基本的に()()の艦隊なんてまあ強いなんてもんじゃないですよね」

「「「!?」」」


不滅であることについてはアキトたちにも説明していなかったからか、アキト、アンナ、ミスティの驚きは大きい。


「不滅って……つまり撃沈されても問題ないってこと!?」

「はい、基本的にはそのはずです。伝承由来の人外ですから、人々の記憶からその存在が忘れ去られない限りは決して消えることはありません」


ガブリエラの説明の通り、伝承由来の人外たちはそういった性質を持つ。

そもそも“幽霊船”である時点で死者の集まりなのだ。すでに死んでいるものを殺すことなどできない。


「いや待て。クラーケンは退治してから復活まで一〇〇年と言っていたはずだ。復活にかかる時間がそれだけ長いならそれほどメリットはないんじゃないか?」

「アキトさんの目の付け所はいいですけど、条件が違います。“幽霊船”は集合体ですからね」


無数の“幽霊船”のうち1隻や2隻を沈めたところでたくさんの“幽霊船”は健在だ。

クラーケンの足が再生したように、無事な“幽霊船”を起点に復活するのならそれほど時間がかからない。


「まあ、全部の幽霊船が展開してるところにまとめて撃沈するような超火力を叩き込んで消し飛ばせば一〇〇年かかるかもしれませんけど……」

「逆に言えば、1隻でも無事ならそれほど時間をかけずに復活できるってことか」

「もちろん沈んだ船の船員たちを少なからず苦しめてしまうが、その辺りについては本人たちに了解を取ってある。これで不滅の大艦隊の完成というわけだ」


不滅かつ強力かつ連携の取れる大艦隊なんて夢のような戦力に違いない。


「その上、今の“幽霊船”の主人格は私のかつての部下でもあったロゼッタ君だった。おかげで話がとてもスムーズだったよ」


生前の縁もあり、クリストファーは容易く“幽霊船”を自分の勢力に引き込めたらしい。


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