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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
12章 揃う役者たち
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12章-底しれぬ力④-


漆黒の異形か放たれた無数の閃光。

ナツミの操舵によって戦艦としては無茶が過ぎる挙動を披露した〈ミストルテイン〉でもその全てを回避することはできず、七割ほどの攻撃が〈ミストルテイン〉を守る魔力防壁に襲いかかった。


その全てが防壁に阻まれたため船体への被害は出ていないが、攻撃による衝撃で〈ミストルテイン〉の姿勢が大きく崩れる。


「ナツミ!」

「わかってるけどちょっと待って!」


アキトの指示に反応しつつすぐさま操縦桿を操作するナツミ。

ほどなくして〈ミストルテイン〉の姿勢は戻り、同時に漆黒の異形から距離を取る。


「艦内に異常は!?」

「船体そのものに損害はないですが、今の衝撃で転倒などの被害が多少報告されています」

『主に格納庫ですー。この船ってずっと平和だったからコンテナの固定とかちょっとサボリ気味でー』


実際、〈ミストルテイン〉の初陣から今日まではまともな被弾など一度もなかった。

初期は攻撃を受けそうになればシオンがすぐ防壁で守り、〈光翼の宝珠〉とアキトが契約して以降はアキトがその力で守ってきていたからだ。


「(今回はさすがにそう甘くはないか……!)」

「敵性体周辺に再び魔力反応! 第二波来ます!」

「全艦対ショック! ナツミは回避だ!」


もちろんアキトも防壁を再度――今度は攻撃が来る方角に出力を集中させて展開する。

先程よりも距離を取ったことで今度は五割以上の攻撃を回避することに成功し、防壁も先程より強固にしてあったので被弾しても先程のように強い衝撃に襲われることはなかった。


とりあえずすぐに撃墜されるリスクは下がったが、状況としては全くよろしくない。


『俺様たちには目もくれねぇな!』

「ああ、完全にこっち狙いらしい」


〈ミストルテイン〉が攻撃を受けている間、機動鎧部隊が何もしていなかったわけではない。

むしろ〈ミストルテイン〉への攻撃を止めようと漆黒の異形やその上に立つディーンへ各々攻撃を仕掛けてくれていたのだが、残念ながらそれらは結果を出せていない。


『近づこうとすると触手が何本も迫ってくる……!』

『狙撃や砲撃も触手か防壁のどっちかに防がれて全然届きません……』


〈ミストルテイン〉への攻撃に集中しているように見えるが、防御方面でも隙を見せているわけではないらしい。これは非常に厄介だ。


〈ミストルテイン〉がこれまで敵の攻撃でダメージを受けてこなかった大きな理由は魔力防壁による防御だが、もうひとつ、そもそも〈ミストルテイン〉自体が攻撃に晒される機会が少なかったというのもある。


というのもアンノウンの多くは知能が低いため、基本的には攻撃しやすい敵を優先して狙う。

そのため、遠くにいてしかも高い高度にいる〈ミストルテイン〉をわざわざ狙うことは少ないのだ。

加えて、仮に〈ミストルテイン〉が標的になった場合でも機動鎧が攻撃を仕掛ければ〈ミストルテイン〉に固執することなくすぐにそちらに標的が移る。


知能が低いゆえに戦略的な優先順位という考えがない。それがアンノウンというものだ。


だが今回の敵はディーンという人間によって制御されているため、そう簡単にはいかない。


「せめて、あっちの防御がもうちょっと薄かったらよかったけど……」


アンナの言うようにこちらの攻撃が通用していたなら、流石にディーンも攻撃ばかりに集中している場合ではなかったかもしれない。

だが鉄壁の防御でこちらの機動鎧部隊の攻撃を物ともしないというのが現実だ。

あちらは心置きなく〈ミストルテイン〉に攻撃できるというわけである。


「第三波来ます!」

「各員備えろ!」


より距離ができたことでさらに被弾数も衝撃も弱まるが、回避も魔力防壁での防御も無限ではない。

このままではそのうち〈ミストルテイン〉が撃墜されて終わりだ。


かと言ってこの状況を打開する策は今のところない。


攻撃役である朱月、ハルマ、ガブリエラの三人も果敢に攻撃を仕掛けてくれているが、触手と防壁による防御は未だ破れていない。

未だ搭乗者不明の〈トリックスター〉も同じだ。

それだけの防御となれば、距離を置いた〈ミストルテイン〉の攻撃でもおそらく破ることは難しい。

それ以前に〈ラグナロク〉使用のために動きを止めれば狙い撃ちにされてしまいかねないので攻撃を仕掛けるというのがそもそも不可能だ。


「(なんとかしてあの守りを抜くしかない)」


ダメージさえ与えられるのであればディーンも攻撃ばかりに集中できなくなり、付け入る隙も増える。

問題はそれをどうやって実現するか、だが……


「……朱月、兄さん、あたしたちの力で――≪月の神子≫の力でどうにかできないかな?」


ナツミが口にした内容は、まさに今アキトが考えていたことと同じだった。


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