12章-激戦②-
『アタシらがこうなってることも含めて色々と言いたいことはあるだろうが、今はまずこの戦いをどうにかするのが先だ! いい感じに温まってきたしちょっと派手にやらせてもらうよ』
ロゼッタの号令に合わせ、“幽霊船”の船たちが前に出る。
『アタシら以外の味方はちょいと下がれ! 前に居られると巻き込みかねないよ!』
「ってことだから機動鎧部隊も一旦戻って! とりあえず〈ミストルテイン〉周辺に集合!」
アンナの指示でハルマたちが〈ミストルテイン〉付近に戻ってくる間に“幽霊船”の船たちが壁になるように〈ミストルテイン〉前方に並んだ。
改めて船を見てみると木製の帆船から数十年前に使われていたと思われる水上艦、アキトたちも見慣れているような戦艦までかなりのバリエーションがある。
これが以前聞いていた“幽霊船”の船団というものなのだろう。
「どうやらこの大艦隊のほとんどは“幽霊船”だったみたいです。普通の人類軍の戦艦が含まれていないわけではないですけど……」
「“幽霊船”ひとつ味方につければそれだけで十分な艦隊が手に入るってことね」
以前クラーケンとの戦いを共にした際は“幽霊船”の実力を見る機会がなかったこともあり、どうして“幽霊船”が【異界】に警戒されるのかがわからなかった。
だがこうして大量の船を目の当たりにすればその理由も理解できる。
「(個々の魔力量はそれほどでもねぇとはいえ、この数の統率の取れた部隊なんて相手にしたくないな)」
特に人類軍や【異界】の騎士団のような個々が特筆して強いわけではない集団からすれば、“幽霊船”の船団はとてつもない脅威だろう。
数はもちろん同一の人外である以上部隊のチームワークに関してもどう考えても“幽霊船”のほうが上なのだから。
『よーし野郎共! 配置についたね!』
気づけば“幽霊船”の船団の半数が横に広く、全ての船が見事に一定の間隔を開けて並んでいた。
その周囲の残り半数はそうして整列している船にアンノウンが近づかないように牽制を行っている。
『全艦、魔力解放! 始めるよ!』
整列している半数がロゼッタの号令に従って魔力を高めると同時に、その船体から魔力の線が伸びて隣り合う船と繋がっていく。
繋がりの中心で一際強い魔力の気配を放つ白い船。
その船首に巨大な白い魔法陣が展開されると、そこから電波していくように魔力の線で繋がる船たちの船首にも白い船のものと同じ魔法陣が展開されていく。
「あれは何やってるの……?」
「術式の模倣……いや、全部の船が同一存在なのを利用した同調……?」
「コウヨウ君! 要するにどういうこと!?」
「多分ですけど、本来白い船のみが使用できる攻撃術式を同一存在であるのを利用して接続している全部の船が発動できるようにしてるんです! それに、術式の制御も発射タイミングも全部白い船に委任している感じで……」
「……白い船以外の船が全部主砲になってるみたいな感じ?」
「だいたい正解だと思います!」
白い船が発射しようとしている魔術が強力なのは気配でわかる。
普通であれば同時に一発しか放てないはずのそれを、“幽霊船”の船団は同時に数十発発射しようとしているということになる。
「問題の術式ですが、〈ミストルテイン〉の〈ラグナロク〉ほどではないでしょうけど、それでも人類軍の最新鋭艦の主砲よりは火力があると推定されます」
「それを一斉掃射!? 下手に撃ったら本部更地になっちゃわない!?」
『あはは! 心配せずとも地面にゃ当てないさ!』
通信越しにこちらの会話を聞いていたらしいロゼッタはアンナの心配を笑い飛ばした。
『さあ、ぶちかますとしようか!』
ロゼッタの声に答えるように、白い船とその左右に広がる船たちの船首に展開された魔法陣の輝きが強まる。
『アタシら“幽霊船”の新しいとっておき、大火力攻撃術式〈レディアント〉! その力、とくと味わいな!」
魔法陣の中心から解き放たれた白い閃光。
〈ラグナロク〉にどこか似た光が数十発同時に放たれたことで、例えではなくアキトたちの視界が白に染まった。
視界はほとんどゼロに等しいが、この一撃でアンノウンの気配が凄まじい勢いで消えていくのがわかる。
そうしてようやく視界が戻った時、先程まで正面に溢れていた大量のアンノウンは見事に一掃されていた。




