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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
12章 揃う役者たち
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12章-〈ミストルテイン〉出陣-


輸送車両を飛び降り、大急ぎで〈ミストルテイン〉に飛び込むアキトたち。

途中十三技班の面々と朱月とは別れ、なだれ込むようにブリッジに到着するやいなや、それぞれが自身のシートに着く。


「すぐにでも発進したい。各員準備を急げ!」

「「「「了解」」」」


ブリッジのメンバーが慌ただしく発進準備を進める中、アキトは格納庫に向かったゲンゾウたちに通信で声をかける。


「班長、各機体の状態は問題ありませんか?」

『おう! 俺たちが拘束された後に本部の連中に手出しをされた感じもねぇ。全部いつでも出せる! ついでに〈ミストルテイン〉の機関部なんかも軽く調べたがそっちも手出しされた気配はねぇな!』


つまり〈ミストルテイン〉はアキトたちが拘束された後そのまま放置されていたらしい。

思えば“推進派”はアキトたちを懐柔するつもりでいたのだ。話がまとまればすぐにでも任務に送り出せるように余計なことはしないでいたのかもしれない。

理由は推測の域を出ないが、アキトたちにとって好都合なのは確かだ。


「通信・管制システムオールグリーン」

「各種レーダー感度良好」

「兵装も全種異常なし、いつでも使える」

「飛行システム、操船システム共に異常なし! ……でも」


セレナ、コウヨウ、ラムダが良い報告をしてくる一方で操舵手であるナツミだけがわずかに表情を曇らせている。


「でも、どうした?」

「このドックのハッチ、どうしよう。閉まったままだよ?」


ナツミの指摘通り〈ミストルテイン〉の停泊しているドックの上部ハッチは固く閉ざされた状態にある。

このハッチはドックの人員でコントロールするもので当然〈ミストルテイン〉から開閉できるものではないが、この状況でハッチを開けてくれるドックの人員なんているはずもないはない。


「いや、別に問題はない」

「そうなの?」

「ああ。……ラムダ、兵装の準備はできてるな?」

「おう」

「手始めに照準上部ハッチ(・・・・・)。邪魔な壁をぶっ壊せ!」

「大丈夫っていうか力技だね!?」


その気になればカナエによるハッキングなどでも開けられるかもしれないが、その時間が今は惜しい。

どうせこの状況なのだから〈ミストルテイン〉が壊そうがアンノウンが壊そうが同じことだろう。


「壊すのはいいが、瓦礫が落ちてくるぞ?」

「俺が防壁で防ぐ」

「ならよし!」

「何もよくないと思いますけど……?」


コウヨウの呟きはあえてスルーしておく。


「ナツミ、〈ミストルテイン〉発進だ!」

「わ、わかった!」


若干戸惑ってはいるもののアキトの指示に頷いたナツミ。

それからすぐ機関部が稼働し始めたようで〈ミストルテイン〉が小刻みに振動を始めた。

続いてわずかな浮遊感があり〈ミストルテイン〉が飛行し始めたのがわかる。


「上部ハッチ破壊に合わせて急速上昇。〈ミストルテイン〉は目立つからら、迅速に地上のアンノウンの射程外まで高度を上げたい」

「了解。……結構Gがかかるかもしれないのでみなさん備えてください」

「カウント10でハッチを壊す。頼むぜ」


そう言ってラムダはすぐにカウントを開始し――、


「――0!」


瞬間、副砲とミサイルが放たれて上部ハッチを破壊する。

その瓦礫や爆風が容赦なく〈ミストルテイン〉をも襲うが、それはアキトの展開した魔力防壁で難なく防ぐ。そして――、


「行きます!!」


次の瞬間、強烈な浮遊感と上から押さえつけられるかのような感覚がアキトたちを襲う。

歯を食いしばったそれに耐えたものの数秒後には目の前に青空と人類軍本部が広がった。


「イナガワ君! 周囲のアンノウンの数は!?」


アキトも含めてアンノウンの気配を察知することはできるが、あくまで感覚によるものなので特に今回のように数が多い場合は正確な数を把握するのは難しい。

数を把握するという点では科学の産物であるレーダーのほうが優秀というわけだ。


「アンノウン反応、総数は――五〇〇〇!? 今もなお増大中!」

「五〇〇〇だって!?」


多くのアンノウンと戦ってきた自信があるアキトたちですら、それほどの数を相手取ったことはない。

中東でテロリストたちに誘導装置を多用されたときですら、ここまでではなかっただろう。


「まさかこれほどとはな……」

「で、どうするよ?」

「どうあれまずは合流だ。宿泊施設に急ぐぞ」


混沌とした人類軍本部上空で〈ミストルテイン〉は残るメンバーの待つ宿泊施設へと舵を切った。


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