表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
12章 揃う役者たち
712/853

12章-現状把握と次の一手-


宿泊施設の中に入れば、施設のロビーにミスティによって〈ミストルテイン〉の船員のほとんどが集められていた。

例外は施設の防衛のために今も外にいるガブリエラたちのような戦闘能力を持つメンバーと十三技班の面々だけらしい。


「戦えるメンバーはともかく、十三技班は何を?」

「戦えないとはいえ魔術の心得はそれなりにあるので、施設の防衛のためにいろいろ仕込みをしてくると」

「具体的には防御結界とかそういうのっすね」


ロビーに残って無数のノートPCや端末と向き合っているカナエがミスティの言葉に補足を加える。


「残念ながら戦えるようなのはギルくんと腕に小型の魔力砲仕込んでるダリルさんくらいなんで。この建物の強度アップのために壁という壁に強化術式書き込むくらいが限界っす」

「いや、それでも十分だ。……そういう貴女は?」

「あ! 別にサボってるわけじゃないっすよ!」

「それは流石にわかるんだが」

「アタシは情報収集担当っす。とりあえず今の本部の状態を探ってまとめてる感じで」


実際いくつものPCや端末の画面には本部内のあちこちの映像が映し出されている。

どうやら本部内各地の監視カメラにアクセスしているようだ。


「……あ、ちなみに緊急事態とは言え本部のシステムに侵入してるとかバレると普通にヤバいのでそこは内緒の方向で」

「本当に恐ろしいな十三技班」


カナエは簡単に言っているが、本部のシステムなど人類軍で最もセキュリティが強固であって当然だ。

もちろんこの緊急時なので普段よりはガードも甘くはなっているだろうが、だとしてのこうもあっさり好き勝手しているのは並大抵のことではないはず。


「別に今はんなことどうでもいいだろ。それよりどうすんだこの後」

「そうそう。なんか魔力とかがわかる子たちからアキトたちがいる方でやばい気配がしたとは聞いてるけど……」

「ああ。まずはそこだな」


あまりのんびりはしていられないので掻い摘んで、時折レオナルドの補足も受けながらアキトたちの前で何があったかを説明する。


「……ゴルド最高司令官のこともすっごい気になるけど、今はまずドレイクさんが問題ってことね」


アンナの言う通り、今はまず人類軍本部にアンノウンを呼び集めているディーンの問題を解決しなければならない。

クリストファーのことはアキトも非常に気になっているが、今はそれどころではないというのが実情だ。


「とにかく俺から話せるのは以上だ。この宿泊施設の状況はどうなってる?」

「はい。私から報告します」


そう言ってミスティはアキト不在の間のこの宿泊施設の状況を説明し始めた。


「艦長たちが出発して以降も特別変わったことはないまま、この建物に軟禁状態で拘束されていました。しかしレイルさんたちが異変に気づきまして」

「さっきアンナが言っていた気配の話か」

「そうです。その時運良く私もレイルさんたちと一緒にロビーにいたので、すぐに船員たちをこのロビーに集めました。その間レイルさんを中心に魔術に通じる面々で防備を整え、それが落ち着いてからは特に戦闘力の高いレイルさん、ハーシェルさん、グレイス技師、ハルマ部隊長の四人が外に出て近づくアンノウンを撃退してくれています」


素早い対応のおかげもあって〈ミストルテイン〉の船員は全員無事。

加えてこの施設の近くでアンノウンの襲われていた人々もここに避難してきているそうだ。


「なるほど、さすがミスティだな。動きが早い」

「い、いえ、このくらいは大したことではないです。それより、ここからどうしますか艦長」


アキトの褒め言葉に照れつつもすぐに真剣な表情に戻ったミスティの問いにアキトは少し考える。


「……どうあれ、まずは〈ミストルテイン〉に戻ることを最優先にしたいな」


アキトたちが今すべきことは人類軍本部にあふれているアンノウンたちとそれを呼び集めているディーンへの対処だ。

そのためには戦うための十分な力が必須になるし、考えたくはないがどうしても勝ち目がないとわかった時に一時撤退するにしても移動手段は必要だ。

どちらに転ぶにしろ〈ミストルテイン〉は絶対に必要になるだろう。


「私も同感です」

「アタシもよ。……でもどうする? ガブリエラちゃんに聞いたんだけど空間転移でパッと行くとかは無理なのよね?」


空間の問題はこちらのメンバーもすでに把握済みだったらしい。


「確かに移動は厳しいな……せめて機動鎧を呼べないのか朱月」

「やろうと思えばやれるが、俺様とガブリエラの嬢ちゃんのふたりしか無理だ。あとまあ、正直かなり目立つだろうよ」


下手すると〈アサルト〉と〈ワルキューレ〉に反応したアンノウンたちがこの宿泊施設に集まってきてしまうかもしれない。

朱月とガブリエラなら多少群がられたところで対処できるかもしれないが、派手に暴れればその時の魔力の気配に反応したアンノウンがもっと集まってくるという悪循環の危険もある。


ただでさえ今もなおアンノウンが増え続けている状況下。

しかも宿泊施設にいる非戦闘員を守りながらということになってしまうと、いくら朱月とガブリエラでも対処しきれなくなるかもしれない。


少なくともここに〈アサルト〉や〈ワルキューレ〉を呼ぶのは最終手段だ。


幸い、既に現地部隊が動き出していたり人が多くいるのであろう本部中央付近に向かうアンノウンの方が今は多く、本部の敷地の中でも比較的外れにあるこの施設に襲いかかってくるアンノウンは少なめだ。

下手にアンノウンを刺激しなければ今より戦闘要員の人数が少し減っても対処できる範囲だろう。


つまりアキトたちに取れる選択は――


「〈ミストルテイン〉を飛ばすのに最低限必要な人員だけで〈ミストルテイン〉に向かい、この施設まで飛んでくるしかない」


アキトの言葉にミスティたちも深くうなずいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ