表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
12章 揃う役者たち
711/853

12章-混乱の人類軍本部-


空間転移で会議室を飛び出したアキトたちは、そのまま会議室の外――上空一〇〇メートルほどの位置に飛び出した。


「ってなんでだ!?」

「え゛? アキト狙ってここに出たんじゃないの!?」


重力に従って落下する中、アキトは想定外の事態に驚いていた。


「俺は宿泊施設まで移動したつもりだったんだが!?」

「それはともかく落ちてる落ちてる! このままじゃ全員仲良く死ぬからまずはこの状況どうにかしてくれ!」

「わ、わかった」


レオナルドの言う通りこのまま地面に叩きつけられればもれなく全員あの世行きになりかねない。

どうして改めて転移しようと魔力を高めるが、それは朱月によって待ったがかけられた。


「アキトの坊主、空間転移はダメだ! 最悪あの世行きになる!」

「どういうことだ?」

「あの男がバカスカ魔物を呼び集めてるせいか空間がおかしくなってやがる!」


上空から人類軍本部を見渡してみるとあちこちで空間に亀裂が入っているし、既にアンノウンが暴れているのか火の手が上がっている場所もある。

朱月の言う通り、ディーンは会議室のみならず周辺一帯にアンノウンを呼び集めているようだ。


「俺の転移が失敗したのもそのせいなのか?」

「ああ。しばらくこの辺りで空間転移なんて真似はしねぇほうがいい」

「なんか落ち着いて会話してるけど現在進行形で落ちてるのわかってるのかな!?」

「騒ぐなやかましい」


朱月が軽く腕を一振りすれば風がアキトたち三人を受け止めて宙に浮かす。

アキトたちはそのまま〈ミストルテイン〉の面々が収容されている宿泊施設を目指すことにした。


「……ひどいな」


眼下の人類軍基地には既にかなりの数のアンノウンが出現し、我が物顔で歩き回っている。

今のところ空を飛べるアンノウンはいないのか地上五〇メートルほどの高度にいるアキトたちは平穏そのものだが、地上では決して小さくない被害が出ているだろう。


「ここは人類軍とやらの本丸だろ。戦えねぇのか?」

「戦える戦力は十分あるはずだが、出現が急すぎだった。出撃命令は出てるだろうが……」

「いきなり過ぎて後手に回ってるのは確実だろうね」


ここは人類軍の本部。つまりは最重要拠点だ。

そもそもアンノウンはいつどこに現れるかわからない存在なので、当然それを考慮した準備もしてはいたはず。

とは言っても、突然この数のアンノウンが出てくることまで想定しておけというのは無理な話だ。


そんな話をしている間に遠目に機動鎧や軍用ヘリが出撃し始めているのが見えたが、現状は混乱もあって劣勢なのを否定はできまい。


「とにかく〈ミストルテイン〉のみんなとの合流を急ごう。戦うにしてもそれからだ」

「ってあれ不味くないか!?」


焦るレオナルドの視線の先にはアキトたちの目的地である宿泊施設。

そして今まさにその宿泊施設に中型アンノウンが数体向かっているところだった。


「な!? 朱月急げ!」

「いや、んな焦んなよ」

「普通に焦るところだと思うんだけど!?」

「そいつは杞憂ってやつだ。見とけ」


深刻さのかけらもない朱月にレオナルドがハラハラしている一方、アキトも最初こそ慌てたものの彼の言わんとしていることを察して落ち着いてきた。


「いや、アキト。なんで君まで落ち着いてるんだよ!?」

「まあ、よくよく考えれば、なぁ」

「何が」


レオナルドの言葉が終わるより先に、宿泊施設の入り口あたりから放たれた光の剣が中型アンノウンの内の一体の頭部を貫いた。


続けて人影がひとつ弾丸のようにアンノウンたちに向かって飛んだかと思えば、先頭を走っていたアンノウンがアッパーでも食らったかのように弧を描いて吹き飛ぶ。

続いて狼の遠吠えと共に光がほとばしり、二体の中型アンノウンの胴をまとめて撃ち抜く。


そうして残った一体が劣勢を悟ったのか逃げようとするが、それはいつの間にかその足元にいた人影が振るった剣によって首を落とされたことであえなく失敗したようだ。


「え、え〜〜〜……」


ほんの数十秒。しかも機動鎧もなしに五体の中型アンノウンが撃退された一部始終を目にしてレオナルドがなんとも言えない声を漏らす。

そんな中、朱月の風によってアキトたちは無事に宿泊施設の前に降り立ち、そこにいたふたり――ガブリエラ、シルバに迎えられた。


「あ、ミツルギ艦長に朱月! それにレオナルドさんもご無事だったんですね」

「ああ。そっちも無事みたいだな」

「兄さん!」


ガブリエラとお互いの無事を確認しあっていれば、〈アメノムラクモ〉を手にしたハルマと丸腰のギルが走ってやってきた。


「よかった。会議をやってる建物の方でやばい気配がしたから心配してたんだ」

「その辺りもすぐに説明する。……見ての通り状況は最悪だからな」


先程の戦いぶりからしてひとまず〈ミストルテイン〉の面々の無事は間違いない。

そのことに安堵しつつ、この後の動きを決めるためにアキトは急いで収容施設へと足を踏み入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ